宮崎県、日本初の民有林集約化でJクレジット認定

3月17日、宮崎県森林組合連合会、諸塚村と西日本電信電話株式会社宮崎支店、及び株式会社地域創生Coデザイン研究所は、耳川広域森林組合、宮崎県木材協同組合連合会、宮崎県造林素材生産事業協同組合連合会、国立大学法人宮崎大学の参画のもと、2021年4月21日に設立した「諸塚村森林・林業DX推進協議会」にて、諸塚村における共同実証事業を実施し、その結果を発表した。共同実証事業は、2021年4月から2023年3月までの期間で行われた。

実証項目は、(1)森林情報のデジタル化、(2)森林情報の見える化・共有、(3)クラウドを活用した所有林/木材取引、(4)民有林の集約化によるJ-クレジット創出の4つ。項目ごとの実証結果は以下の通りである。

(1)森林情報のデジタル化

 人工衛星とドローンを組み合わせた独自の方法により森林情報をデジタル化することで、従来の現地調査(毎木調査)と比較して、十分な調査精度を確保したうえで飛躍的な省力化(約40分の1)が確認できた。

(2)森林情報の見える化・共有

 取得した森林デジタル情報をAI(人工知能)で解析し、森林施業や資産評価に役立つ情報として森林クラウド(実証環境)にて見える化を実施した。地域のプレイヤーに林業経営・再造林の意欲向上につながる相互コミュニケーションの場を提供することができました。

 林業事業体の業務での活用として、台風被害時には人工衛星写真の比較により、被害箇所を概ね検出した。森林組合が現地調査した写真やコメントを記録し、関係者(所有者、役場、ほか事業体)と共有することで林道や崖崩れ現場等の状況把握を行うことができた。

(3)クラウドを活用した所有林/木材取引(需給マッチング)

  • 【所有林取引】森林組合向けに森林クラウドを活用した疑似取引体験会を実施した。モニターへのアンケート調査の結果、所有者探索の省力化や立木評価の省力化等の効果を確認した。
  • 【木材取引】素材生産者および製材所において森林クラウドを活用した取引を実施した。素材生産者は、基準とした市場価格よりも高く売れる、製材所は、予約により安定的に材木を確保できるという点に価値を見出すことが検証できた。さらに、立木状態での木材の予約売買が計画的な森林施業、効率的な経営計画策定につながり、ひいては国産材の安定供給に資することになる。

(4)民有林の集約化によるJ-クレジット創出

 ICT を活用し、国内でも先進的な取り組みである”民有林の集約化”による J-クレジットのプロジェクト登録申請を実施し、認証委員会にてプロジェクト登録承認(2023年3月15日)を得た。本取り組みにより、市場の需要に応える規模のクレジット発行を可能とし、クレジット取引のさらなる活性化による個人所有の民有林の付加価値向上につながることが確認できた。

今後の「森林情報のデジタル化」、「森林情報の見える化」、「クラウドを活用した所有林取引」については、本実証事業のノウハウを活用し、宮崎県内の一部地域において、デジタル林業の社会実装(実取引)が進んでいる。

【参照ページ】
「諸塚村森林・林業DX推進協議会」における実証結果、今後の展望について

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