8月2日、国立環境研究所 物質フロー革新研究プログラムの研究チームは、セメント・コンクリートの供給側と需要側における計16のCO2排出削減策を調査し、日本のセメント・コンクリート部門における2050年カーボンニュートラルの達成方法を検討した。
その結果、コンクリートの炭酸化によるCO2吸収量を加味し、エネルギー効率改善や燃料転換、セメント原料代替、低炭素型セメント、炭素回収利用技術(CCU)等の供給側における計9つの対策を仮に最大限に実施した場合でも、カーボンニュートラル達成に必要な排出削減量には約20%(約400万トン CO2)届かない可能性があることが示された。しかし、素材を過剰に使用する設計の回避や、建設物の長期利用、共有化、都市機能の集約化、解体部品の再利用等を含む需要側における計7つの対策を組み合わせて早急に実施した場合、2050年カーボンニュートラルの達成が見込まれるという。
まず本研究では、社会経済における素材の流れを解析する物質フローモデルと、素材生産・利用・解体に伴うCO2排出・吸収量を推計する物理化学モデルを組み合わせることで、現状の把握を行った。その結果、2019年には原材料の調達から解体に至る一連のコンクリート循環において、日本全体の排出量のうち約3%に相当する34 MtのCO2が排出されたことがわかった。
続いて、製品やサービスの需要、供給、固定資本形成との関係を記述した経済モデルを用いた解析を行った。その結果、コンクリート需要の最大の要因は住居だが、約半分は医療や福祉、教育、輸送、小売り等のサービス需要に起因することがわかった。
その上で、供給側と需要側の合計16の施策を調査し、排出削減インパクトを分析した。その結果、たとえ炭酸化によるCO2吸収効果を加味したとしても、供給側の対策だけではカーボンニュートラルの達成は困難である可能性が示された。一方で、素材を過剰に利用する設計の回避や、建設物の長期利用、共有化、都市機能の集約化、解体部品の再利用等の需要側での対策(計7つ)を早急に実施することで、2050年カーボンニュートラルの達成が見込まれることが示唆された。
国立環境研究所はセメント・コンクリート部門のカーボンニュートラル戦略は炭素回収貯蔵技術(CCS)に強く依存する傾向にあることを示唆し、需要側でも対策することで、CCSへの依存度を大きく下げられるとした。