【ESG 企業開示事例⑲】ESG説明会の実施やTCFDへの段階的な対応に注目!野村総合研究所のESG・サステナビリティ経営

こんにちは!ESG Journal編集部です。

本記事はESG / SDGsに力を入れて取り組んでいる上場会社の事例を取り上げるシリーズになります。

第19弾として、今回は野村総合研究所(以下、NRI)を取り上げます。NRIは2014年からサステナビリティ担当として本田健司氏を置き、ESG経営を強力に推進してきました。本田氏就任以降のサステナビリティへの取り組みを総括した書籍『イチからつくるサステナビリティ部門』は、実務におけるESGへの取り組みが詳細に記載されており、非常に勉強になります。今回は統合報告書の開示や書籍の内容に触れながら、NRIのESG・サステナビリティ経営について掘り下げていきたいと思います。


イチからつくるサステナビリティ部門 元システムエンジニアの挑戦


野村総合研究所(NRI)

野村証券系のSIで略称はNRI。コンサルティング、システム開発、運用などのITソリューションを一貫して提供。顧客との関係性構築のため「プライムアカウント戦略」を推進し、海外ではアジアに加えて欧米での事業基盤構築を図る。

出所:SPEEDA、会社公表資料より作成

CSR/ESGにおける主な対外的評価

「DJSI World」:3年連続で選定(2018年9月〜)
「DJSI ASIA」:5年連続で選定(2016年9月〜)

「CDP」:気候変動対策の調査でAリストに2年連続で選定

外部からの評価 | 野村総合研究所(NRI)

GPIFの運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」:2運用機関選定

DJSIやGPIFから実際にどのような点が評価されたのか、統合報告書やESGに関する開示資料を中心に、詳しく見ていきたいと思います。

力を入れたESG情報開示施策

本田氏がサステナビリティ担当に就任した2014年当時、NRIは多くの企業が加盟する国連グローバル・コンパクト(UNGC)にさえ加盟しておらず、ESG株式指標にも殆ど組み入れられていませんでした。そのような中で本田氏がまず始めに提案した施策は以下になります。

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出所:本田健司. イチからつくるサステナビリティ部門 元システムエンジニアの挑戦 (Japanese Edition) (Kindle No.1089). Kindle 版.

その多くがESG情報開示に係るものであったそうですが、やはり施策ができていても公開しなければ外部評価機関から評価されない、という危機意識が当時からあったそうです。

「企業のサステナビリティ活動のゴールは、外部評価で高い順位やスコアを獲得することではない。昨今では、事業活動の中で社会課題を解決するCSV(共有価値の創造)などが注目されており、事業戦略の中に社会価値の創造などを組み入れる企業も増えてきている。しかし、その前に企業は、事業活動が社会に悪影響を与えていないことを示す必要があり、その証明のために評価機関から一定の評価を得ることが重要だと私は考える。どの評価機関に認めてもらうべきかについては、ある程度の見極めは必要だが、一般に評価機関は外部環境の変化を捉え、質問内容や評価基準を変える努力をしている。その評価結果に真摯に向き合って、企業の課題を明確にし、対処していく姿勢は現在も変わっていない。」

本田健司. イチからつくるサステナビリティ部門 元システムエンジニアの挑戦 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1097-1104). Kindle 版.

評価機関からの低い評価に悩んでいる企業は、情報公開不足が主な理由であることが多いので、そういった観点から再度自社の開示内容を見つめ直す必要がある、と本田氏は語っています。

環境目標の設定

NRIは「30年度までに13年度比で温室効果ガス(GHG)排出量を55%削減」、「データセンター(DC)での再生可能エネルギー比率を36%までに高める」などの環境目標を発表しています。NRIでは独自の環境マネジメントシステムを導入しており、過去の温室効果ガスの排出量の推移をみながら決めています。

システム開発を主たる事業とするNRIは足元は新しいデータセンターへのシステム移行により温室効果ガスを削減し、将来的には再生可能エネルギーを利用するという2段階のアプローチを用いることで、2030年度までの温室効果ガス55%削減を実現しようとしています。

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出所:会社公式HP

ESG説明会の実施とTCFD対応の開始

ESG説明会の実施

NRIは2019年2月より国内機関投資家を対象に「ESG説明会」を実施しています。通常のイベントでは申込みに対する出席者の割合は良くて8割程度とのことですが、初回ESG説明会は申込み者の9割以上が参加し、参加者からの事後アンケートも非常に評判が良かったそうです。

また開催に向けて社長や事業戦略部、IR室等を巻き込みながら進めたことで社内全体のサステナビリティに関する理解が深まり、その後の事業戦略や事業計画の内容に自然とサステナビリティの要素が多く盛り込まれるようになったと本田氏は述べています。

段階的なTCFDへの取り組み

またNRIは初回ESG説明会の開催をTCFD対応の発表の場として位置づけたそうです。TCFD対応は時間がかかるため、まずESG説明会ではTCFDへの賛同を表明し、今年度に対応する事項と、次年度以降に対応する内容を整理して発表したそうです。

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出所:第1回ESG説明会資料(2019)

また第2回以降のESG説明会では、「TCFDで事業や財務のインパクトをどこまで確認するか」、「ESGの取り組みをどのように評価に加えていくか」といった外部からの質問に具体的に答える内容にしたことで、機関投資家からの評価も上がったそうです。

現在NRIでは年度毎に分けてTCFDの取り組みを進めており、2021年度以降は各事業毎のシナリオ分析・財務的インパクトの試算を進め、統合報告書への記載を行う予定です。

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出所:本田健司. イチからつくるサステナビリティ部門 元システムエンジニアの挑戦 (Japanese Edition) (Kindle No.787-788). Kindle 版.

国際的なイニシアティブへの参加

NRIは国連グローバル・コンパクト、WBCSD、JCI、RE100など多くの国際イニシアティブに加盟しています。また2020年5月には当時日本ではまだ5社(味の素、アシックス、アスクル、丸井グループ、小野薬品工業)しか加盟していないBusiness Ambition for 1.5℃への参画が認められ、国内ではトップクラスのイニシアティブ加盟数を誇る企業となりました。


野村総合研究所、「Business Ambition for 1.5℃」に署名 ~世界の気温上昇を1.5℃に抑える環境目標へ~ | お知らせ | 野村総合研究所(NRI)

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出所:会社公表IR資料

最後に

NRIのESG・サステナビリティ経営に関する近年の取り組みをまとめましたがいかがでしたでしょうか。特にTCFDには段階を踏んで丁寧に取り組んでおり、これからTCFD開示に取り組む企業にとっても非常に参考になると思います。またコンサルティング・システム開発という業種においてここまでESG推進を行っている企業は珍しいですが、真剣にESG・サステナビリティ経営に取り組むことで外部からの評価も大きく高めており、今後の動向にも注目していきたいと思います。

ESG JournalではNRI以外にも多くの企業の事例を取り上げていますので、お時間ある方は是非こちらからご覧ください!前回は三井住友トラスト・ホールディングス(SMTH)について取り上げました。

ESGオリジナルコラムアーカイブ

【ESG 企業分析⑱】三井住友トラスト・ホールディングスのマテリアリティ・マネジメントとサステナブル金融への取り組み

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次回も上場企業のESG開示やESGの最新トレンドについて、詳しく紹介していきたいと思います。

それではまた!

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