人権デューデリジェンスの進め方、押さえておきたい基本手順 。

人権デューデリジェンスの進め方は、方針の策定後、対象とする範囲の特定、リスク評価の順で行われることが多い。そして、評価結果に基づき、対応策の策定を行う。その後、対応策は徐々に内容を高めていきつつ、初年度は実施内容を開示する。以降は、重大なリスクの開示やリスク評価対応のサイクルを回していくというプロセスがシンプルな手順であるといわれている。

人権デューデリジェンスが求められる背景

人権デューデリジェンス(以下、人権DD)に関する動きは各国で活発化しており、日本でも進展が見られている。ここでは、人権DDの潮流を紹介する。

人権デューデリジェンスとは

人権DDとは、人権リスクを抑えることを目的とした企業活動を指す。人権DDに取り組む企業は、その事業活動において、まず強制労働やハラスメントなどの人権問題にかかわるリスク・人権を侵害するような行為がないか調査する。そして起こりうるリスクが発生しないよう、詳細な分析・対策の策定のもと、具体的なアクションを実施する。

企業は子会社・関連会社を含む自社グループだけではなく、サプライチェーン上で発生しうる人権リスクに対しても対応しなければならない。もし人権リスクの高い取引先と事業を行っていれば、その企業は人権リスクに対処していないとしてみなされうるからだ。

加速する各国での法制化

人権DDへの国際的な取り組みは、2008年の国連による「保護、尊重及び救済の枠組み(通称:ラギーフレームワーク」が皮切りとなった。以降、人権関連法の制定・施行が各国で進められてきた。

国/国際機関制定年・施行年法名
国連2008年保護、尊重及び救済の枠組み(ラギーフレームワーク)
米国カリフォルニア州2010年・2012年サプライチェーン透明砲
国連2011年ビジネスと人権に関する指導原則
米国2012年米国金融規制改革法の紛争鉱物条項
英国2015年現代奴隷法
フランス2017年人権DD法(企業注意義務法)
オーストラリア2018年現代奴隷法
OECD2018年紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデューデリジェンス・ガイダンス
オランダ2019・2022年児童労働DD法
ノルウェー2021年・2022年透明性法
ドイツ2021年・2023年施行予定サプライチェーンDD法

EUは、人権・環境・グッドガバナンスを尊重し、バリューチェーン上のDD実施を義務付ける「EUコーポレート・サステナビリティDD指令案」(2022年)を公表した。これは各EU加盟国に適用される規制ではなく、各国に対して国内での立法手続きを求める指令だ。そのため施行されれば、2026年頃から各EU加盟国で導入・法制化の動きが加速することが予想されよう。

日本では人権関連法の具体化が進められていない。しかし、海外に追随する動きは見られる。経団連は2021年12月に人権DDの指南書として「人権を尊重する経営のためのハンドブック」を発行した。また国も人権問題を経済安全保障の一環と捉えており、経済産業省に「ビジネス・人権政策調整質」を設置している。

すでに国内企業でも実践される人権デューデリジェンス

人権DDや人権を意識した経営をすでに実践している国内企業も多く存在する。以下では、上場企業が実践している人権DDの事例を紹介する。また、スタートアップなどの中小企業では、人権DDまでの対応は進んでいないものの、人権に配慮し一歩踏み込んだ取り組みが実施されている。

関連記事:人権デューデリジェンスとは何をすればよいか。海外事例から学ぶ。|ESG Journal

キリンホールディングス

国内飲料大手のキリンホールディングスは、人権尊重の取り組みに関する全ての文書・規範において、人権方針を上位に位置付けて発信しているだけでなく、その策定過程についても開示している。リスクの特定→人権方針策定→人権DDの実施など、実行プロセスが明確に示されているところがポイントだ。

【リスク特定手順】

人権方針作成前には、グループ事業で重要と思われる人権課題を列挙し、外部専門家の意見やデスクトップ調査を踏まえ、リスクのマッピングを行っている。高リスクと特定された国・地域で活動する人権専門家とテレビ会議を開催するなど、現地の意見をリスクマップに反映させており、実情に合わせている。

【人権方針策定】

人権方針の策定段階においてはステークホルダーの意見を可能な限り反映させるため、外部専門家やステークホルダーとの対話を実施。また、策定段階から人権リスクの洗い出しを進め、方針策定に反映させている点も特長だ。

【人権DDの実施】

高リスクとみなされた国・地域で、現地訪問による説明・評価を実施し、現地の事業会社とともに行動計画を作成している。行動計画の推進は現地主体で行うかたわら、横断的事項や現地の取り組みのモニタリング・進捗確認については本社で進めている。

参考:人権の尊重|キリンホールディングス

アンサーノックス

外国人派遣事業を展開するスタートアップであるアンサーノックスは、ダイバーシティを重視した働き方を実践している。「ドアを叩いてくれた人すべてに応える」という企業理念を中核として、人種・国籍・性別・年齢・障がいの有無などに関わらず、多様な人々を従業員スタッフとして雇用している。なお、スタッフの属性は、シングルマザーを含む女性、70代から80代までのシニア、外国籍、LGBTなど多岐にわたり、それぞれが自身の得意分野や強みを発揮できる場を提供している。

同社は、「何ができるか」ではなく、「これがしたい」という意志を持っているかどうかを重視し、「メンバーに求める10のアクション」を制定している。この行動指針とともに「アンサーノックスの5つのバリュー」を発信することで、採用段階から同社の理念に共感・賛同する人材を集めることに成功。

またその活動範囲は社内にとどまらず、次世代を担う子供たちにまで及んでいる。子連れ出勤の推奨で子供が働く親の働く姿をキャッチできるようにしたり、外国籍の従業員も働く企業主導型保育園の経営で子供が外国文化に触れられるようにしていたりするのがその例だ。

参考:会社概要|アンサーノックス

人権デューデリジェンスに必要な3つのポイント

人権DDは「ステップの把握」「フォーマットの参照」「人権リスクの事前理解」の3つのポイントを押さえておくと取り組みやすい。

人権デューデリジェンスのステップ

「責任ある企業行動のためのOECDデュー・デリジェンス・ガイダンス」では「デュー・デリジェンスのプロセス」が明示されており、以下の6つのステップで構成されている。

  1. 責任ある企業行動を企業方針及び経営システムに組み込む
  2. 企業の事業、サプライチェーン及びビジネス上の関係における負の影響を特定し、評価する
  3. 負の影響を停止、防止及び軽減する
  4. 実施状況及び結果を追跡調査する
  5. 影響にどのように対処したかを伝える
  6. 適切な場合是正措置を行う、または是正のために協力する

このうち特に重要とされるステップ2〜4に焦点を当て、EY JapanとKPMGによる人権DDプロセスを具体的に紹介していく。

ステップ2:リスクの特定プロセス(EYJapan)

EY Japanは「2. 人権への負の影響の特定と評価」にフォーカスした実務の取り組み例を紹介している。本ステップは、以下の2つの手順に沿って行われる。

①リスクの高い事業及びビジネス上の関係を特定する

②実際の及び潜在的な負の影響を具体的に特定して評価する

参考:人権デュー・ディリジェンスの実務例(参考資料)|EY Japan

①リスクの高い事業及びビジネス上の関係(ステークホルダー)を特定する

バリューチェーンは、事業者の生産活動だけではなく、原材料の調達、加工、物流などを含む川上での活動と、販売・サービスや最終消費者による使用・消費といった川下での活動の2つから構成される。人権リスクの及ぶ範囲はバリューチェーン全体に及ぶため、各バリューチェーンのステークホルダーの人権リスクを理解する必要がある。人権リスクに対して脆弱な立場に置かれている女性や子供、障がい者、移民、少数者などへの考慮も忘れてはならない。

画像出典:人権デュー・ディリジェンスの実務例(参考資料)|EY Japan

影響を受けるステークホルダーを把握した後、関連する人権課題を特定する。以下でその例を示す。事業活動が異なると、人権の影響を受けるステークホルダーの属性や、人権課題の内容も変化するため注意が必要だ。

労働者地域住民消費者・ユーザー・一般市民社会
強制労働の排除児童労働の実効的廃止結社の自由と団体交渉非差別、機会均等など労働条件と社会的保護ハラスメント、非人道的な扱い労働安全衛生プライバシーの保護安全衛生水へのアクセス保安慣行土地への権利、土地収奪と強制移住先住民の権利差別的な広告表現の排除責任あるマーケティングプライバシーの保護紛争鉱物ハイリスクな状況

最後に考慮すべきリスク要因を洗い出す。人権リスクの評価に当たっては、主に評価対象企業の「セクターリスク」「地理的リスク」「製品リスク」を評価要素に含める。

それぞれのリスクについては、以下の指標や情報例が参照できよう。

セクターリスクOECDデュー・ディリジェンす・ガイダンスに記載の産業分野別ガイダンス
地理的リスクThe Global Slavery IndexChildren’s Rights and Business Atlas
製品リスク紛争鉱物米国労働省作成のList of Goods Produced by Child Labor or Forced Laborに含まれる原材料の使用

②実際の及び潜在的な負の影響を具体的に特定して評価する

サプライチェーンにおけるアプローチとして、以下の5つの方法が挙げられる。

確認方法厳格度概要
監査国際的な人権の監査基準に基づく監査手法不適合指摘の実施リスク・機会の評価が最も包括的
訪問監査の簡易版ワーカーインタビューや現場視察を適宜カット不適合指摘の実施
現場視察記録チェック、ワーカーインタビューをカット
電話・オンライン会議等によるヒアリング留意すべきと思われる回答に関する状況確認
質問票などによる自己評価ネット・Excel・紙面などによる遠隔アンケート低コスト

人権DDに取り組む目的と事業者の置かれた状況を考慮し、採りうる最も効果的な手法を使い分けなければならない。

正確性の高いアプローチ手法は監査だが、厳格なぶん準備・実施に相応の資源と知見が必要となる。訪問は監査に比べ、短時間で現場及び管理体制を確認することはできるが、それでもリスク評価が限定的になるのは否めない。

厳格度が中の現場視察に関しては、一定程度の現場確認は可能であるが、重大なリスクを見逃す可能性があるということを頭に入れておく必要がある。また、電話・オンライン会議等によるヒアリングは現場の確認ができないことに留意すべきだ。

ステップ2-5:リスク特定、対応策の策定、評価プロセス(KPMG)

KPMGによれば、「2. 企業の事業、サプライチェーン及びビジネス上の関係における負の影響を特定し、評価する」「3. 負の影響を停止、防止及び軽減する」「4. 実施状況及び結果を追跡調査する」「5. 影響にどのように対処したかを伝える」の4つのステップに沿って実務上のポイントを紹介している。それぞれのポイントは以下のとおり。

ステップ2:潜在的な人権リスク・顕在化した人権リスクを区分する

ステップ3:自社にとっての優先度を考慮しながら防止・軽減策に取り組む

ステップ4:負の影響の防止・軽減策の実施状況をモニタリングし、有効性を評価する

ステップ5:今後の課題を明確にした上でステークホルダーとコミュニケーションを図る

参考:実効性のある人権デュー・ディリジェンスを目指して|KPMG

ステップ2:潜在的な人権リスク・顕在化した人権リスクを区分する

人権に対する影響評価においては、事業活動に内在する潜在的な人権リスクを把握・調査するために、それら負の影響を調査する段階だ。具体的な実施方法として以下の3つの例が挙げられる。実際とりうる方法は、各企業のリソースや取り組みレベルに応じて異なる。

  • 公開情報や各種データベースを活用しデスクトップ調査を通じて人権リスクを特定
  • 調達統括部・人事部・経営企画部などの社内の関連部署にヒアリング
  • 取引先や業務委託先などの社外ステークホルダーがSAQ(調査票)に回答

人権に対する影響評価を効果的に行うには、人権リスクを「潜在的な人権リスク」と「潜在化した人権リスク」に分け、意識的に区別する必要がある。

潜在的なリスク事業活動を通じて人権侵害を引き起こす将来的な可能性防止・軽減を通して対処
顕在化した人権リスクすでに発生してしまっている人権侵害グリーバンス・メカニズム(是正・救済)の対象

影響評価を実施している際、顕在化した人権リスクが特定されることも考えられる。その場合、すみやかにリスクへ対応することが優先されるので、内部通報制度や相談窓口など企業の苦情処理メカニズムを活用しながら、解決を進める必要がある

ステップ3:自社にとっての優先度を考慮しながら防止・軽減策に取り組む

ステップ2で把握・特定されたリスクによって防止・軽減策は異なる。画一的に進めるのでなく、優先順位やリスクの特性に応じた対応を検討しなくてはならない。

しかし、対応策の検討には、一定のパターンがあるので、外部のガイダンスを参考にすることができる。KPMGは、OECDガイダンスが示す負の影響の防止・軽減に向けた方向性を「具体的アクション」として活用できるとし、以下のように整理している。

ガバナンスの確保人権リスクを管掌する担当役員の任命取締役会レベルによるモニタリング
対応体制の確立人権に対応する担当部署の設置選任担当者のアサイン
各種施策の展開人権に関連する社内規定の整備既存のリスク管理体制への人権リスクの統合業務委託契約などの見直し投資判断における人権リスクの評価内部監査を通じた人権への対応状況の評価研修やワークショップなどを通じた周知浸透関連ステークホルダーとのエンゲージメント実施

人権リスクによってどのアクションを実施するか優先順位をつけるのはもちろんだが、中長期的には全アクションに取り組むことが重要だ。人的・時間的リソースや現状の取り組みの深度を考慮しつつも、広くガバナンスの確保や対応体制の確立にも取り組むべきだ。

ステップ4:負の影響の防止・軽減策の実施状況をモニタリングし、有効性を評価する

モニタリングは、一連の施策の有効性を適切なタイミングで評価すること。そして、ステップ2で把握・特定した人権に対する負の影響の解決に効果を発揮しているかの確認を行う。KPMGによれば、「外国人技能実習生に関するリスク」が特定された場合の、モニタリングまでのフローが紹介されている。下記を参照されたい。

(事例)

リスク内容取引先の外国人技能実習生の仲介手数料問題をリスクとして特定
対応策グローバル・スタンダードが要求する人権尊重の観点から何が問題を研修・ワークショップを通じて関係者に啓発実習生が負担した仲介手数料を返還するよう取引先に要求
モニタリング研修・ワークショップの実効性を確認仲介手数料が返還された外国人技能実習生の割合を定期的に確認

人権DDは、一度実施すれば終わりでない。定期的かつ継続的な取り組みが前提となる。そのため、の効果・改善状況の定期的な把握を忘れてはならない。「ステップ4. モニタリング」は「ステップ3. 防止策及び軽減策への着手」とセットと覚えておこう。

ステップ5:今後の課題を明確にした上でステークホルダーとコミュニケーションを図る

前項までは、人権DDの実施のプロセスだが、情報開示やコミュニケーションなどの周知活動も人権DDを高度化させていく上では、欠かせないステップだ。

まずは毎年徐々に取り組みを発展させることを前提に、対応できている部分から情報を開示していくことが重要となる。多くの日本企業を見ると、取り組みがある程度進んだ後、情報開示を行う傾向がある。しかし、長期的な取り組みとなる人権への対応は、求められる全ての要件を一気に満たすのは難しい。情報開示が全くないままだと、機関投資家や銀行などは人権に対する取り組みそれ自体がない企業と判断してしまうかもしれない。

また、自社が認識する課題や次年度の対応計画・目標も併せて示すことも肝心だ。現状をステークホルダーに伝達するだけでなく、フィードバックを活かす仕組みを人権DDに構築することも忘れないようにしたい。

人権デューデリジェンスのフォーマット

人権デューデリジェンスの実践にあたっては、国際的にあらゆる関連機関がフォーマットやツールを公開しているので、ガイドラインなどツールを参考にするとよいだろう。

責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン

日本では、2022年9月に経済産業省が「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を公開している。本ガイドラインでは、人権デューデリジェンスの概要から実践の手順まで細かに示されている。特に、4章からは具体的なプロセスを公開している。例えば、「リスクの特定」というステップにおいて、業種ごとにどのようなリスクが想定されるかを示していたり、「リスクの影響評価」というステップにおいては、工場でのヒアリングなど具体的な事例を用いて説明をしている。自社の事業に合わせてどのような実践があるかを調べる際に活用してほしい。

参考:経済産業省HP「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」

人権デュー・ディリジェンスの実践のためのマニュアル 〜人権分野の責任ある企業行動

フォーマットを参考に人権DDを実践したい場合、GCNJ(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン)のサプライチェーン分科会が発行している、「人権デュー・ディリジェンスの実践のためのマニュアル 〜人権分野の責任ある企業行動〜」がおすすめだ。本書は、組織とそのサプライチェーンが、事業活動を通して顕在・潜在する人権リスクを回避し、その原因を適切かつ合理的に管理するための手順を示している。

DDに関してより詳細な内容を記載した「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」を参照して作成されている。また以下のように、プロセスに応じた各項とPDCAを関係づけて整理されているのも分かりやすい。

参考:人権デュー・ディリジェンスの実践のためのマニュアル ~人権分野の責任ある企業行動~|GCNJ

人権デューデリジェンスの具体的リスク

法務省人権擁護局が公開している「今企業に求められる『ビジネスと人権』への対応」では、企業活動に関連する人権に関するリスクをリストアップしている。以下の25つの分野で構成されている。

自社の人権リスクを把握するための、参考資料として活用されたい。

人権分野人権リスクの例
賃金の不足・未払い、生活賃金使用者があらかじめ労働契約・就業規則で定められた賃金を所定の支払日に支払わない
過剰・不当な労働時間週8時間×5日の労働時間を超えて、臨時的な特別の事情なしに労働を強いる
労働安全衛生労働に関係して負傷及び疾病が発生する
社会保障を受ける権利傷病や失業などで生活が不安定になった際、健康保険や年金、社会福祉制度などによる現金・現物等の給付にアクセスする権利が侵害される
パワーハラスメント身体的・精神的な攻撃によって労働者の就業環境を侵害する
セクシュアルハラスメント職場での性的な原動によって不利益を受けたり就業環境が害される
マタニティハラスメント/パタニティハラスメント妊娠・出産や育児のための勤務時間の制限に関して、上司・同僚からの原動によって労働者の就業環境が害される
介護ハラスメント介護に関する制度利用の妨害などによって、家族の介護を行う労働者の就業環境が害される
強制的な労働処罰の脅威による強制された労働などで基本的人権を侵害される
居住移転の自由本人の意思に反して居住地・移動先を決定する
結社の自由労働者の有する労働組合加入の自由決定権を侵害する
外国人労働者の権利外国人であることを理由に労働条件において差別的な扱いを受ける
児童労働法律による就業最低年齢を下回る年齢の児童が労働を行う
テクノロジー・AIに関する人権問題インターネットやICT、AIの普及に伴い人権問題が生じる
プライバシーの権利私生活や家族などに対して不当に干渉する
消費者の安全と知る権利消費者の心身の健康を概数rような製品・サービスを提供する
差別業務と何ら関係のない属性・雇用形態を理由に、特定個人を不利な立場に置く
ジェンダーに関する人権問題男女間で就職の機会や賃金などの待遇で差別を受ける
表現の自由外部から干渉されることなく意見を持ち、伝える権利を妨げる
先住民族・地域住民の権利企業活動により先住民族や地域住民のあらゆる人権を侵害する
環境・気候変動に関する人権問題事業活動において環境を破壊したり、水質汚濁を引き起こしたりする
知的財産権個人や企業等に属する知的財産権を侵害する
賄賂・腐敗事業活動で不正や違法行為の誘因として、贈与や融資などを供与したり受領したりする
サプライチェーン上の人権問題サプライチェーン上で人権侵害が発生する
救済へアクセスする権利人権リスクの被害者が救済を受けるためのアクセスが確保されない

上記のリスクは、自社内だけでなくサプライチェーン上でも起こりえることを認識しておくとよいだろう。サプライチェーンにおいて人権侵害が発生した場合、たとえ直接の取引先でなくとも、企業の責任が問われつつある。調達から商品の販売・サービスの提供、廃棄・再利用に至るまで、サプライチェーン全体においても、自社内同様の人権への取り組みがあるか把握し、適切な対応をすることが求められている。

参考:今企業に求められる「ビジネスと人権」への対応 詳細版|法務省人権擁護局

まとめ

人権DDはサステナビリティを進める中でも、とりわけ継続的かつ中長期的な取り組みを必要とする課題だ。そのような人権DDを効率的・効果的に進めるには、人権DDの全体像を把握し、自社の事業活動に参考可能なプロセスを落とし込んでいくとよい。人権DDのフォーマットを活用したり、人権リスクのリストを読み込むことで、人権リスクの防止・軽減に普段から取り組むことも可能だ。

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