本記事はESG / SDGsに力を入れて取り組んでいる上場会社の事例を取り上げるシリーズになります。
第2弾として、本日は三井化学株式会社(以下、三井化学)の直近のESGに関する取り組みと統合報告書やESG説明会でのIR開示内容を解説したいと思います。
三井化学について
石化と基礎化を中心とした汎用化学品の総合化学メーカー。モビリティ、ヘルスケア、フード&パッケージング向けを強化方針。世界シェアでメガネレンズ材料はトップ、自動車材PPコンパウドは2位。
出所:SPEEDA
CSR/ESGにおける対外的評価
優れた統合報告書(GPIF調査):4運用機関が選定
・財務・非財務の情報が事業ごとに統合された形で記載されており、それがどのように競争優位性に結びついているかが明快
・ESG 要素をどう経営に反映させていくのかについて詳しく記載がある点や、CEO メッセージや CFO メッセージで、経営層の考えが良く分かる内容になっている点を特に評価
・長期経営計画の実現に向けて、経済・環境・社会の 3 軸で具体的な KPI を設定。環境と社会では提供する製品・サービスの認定プロセスや KPI の設定を詳細に記載しており、見える化ができている
出所:「GPIF の国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い統合報告書」GPIF(2021/2/24)
GPIFの運用機関からも高い評価を受けている三井化学は、ESGに関してどのような開示をしているのでしょうか。次章以降は評価されている項目を具体的に見ていきたいと思います。
力強く分かりやすいCEOメッセージ
まず何といってもCEOメッセージを中心に経営陣の考えが非常に良く分かる内容になっています。経済・環境・社会の3軸経営を明確に打ち出し、ESGの重要性を説いています。
CEOメッセージ
計画の着地点を2030年頃に定め、再度視線を高くして2050年頃の社会を想像し、そこからバックキャスティングして目標を再設定する。こうした考え方は従来の日本企業のマネジメントにはなかった考え方だと言えます。
出所:三井化学レポート2020
セグメント毎のROIC開示
三井化学は2019年度よりセグメント別のROICを開示しています。日本の上場企業でROIC・WACCを根幹に据えてセグメントに至るまで開示を行っている企業はまだまだ少ない印象ですが、三井化学はCFO先導のもと、資本コストを意識した経営をしっかりと進めてきています。
出所:三井化学レポート2020
Blue Value / Rose Valueという独自のESG指標
ESGを推進するにあたって、三井化学が独自に制定した環境貢献価値指標「Blue Value index」とQOL(社会)貢献価値指標「Rose Value index」を用いて、提供する製品や大型投融資を評価し、環境・QOLそれぞれに貢献価値が高いものをBlue Value・Rose Value製品として認定しています。
これら2つの指標を用いて製品・サービスの認定プロセスやKPIの設定を詳細化することで、ESGの見える化が出来ている、と市場は受け取っているようです。
出所:三井化学レポート2020
各事業部への財務・非財務情報の落とし込み
主要製品(財務)とBlue Value / Rose Value(非財務)という整理を行い、各事業部毎にそれぞれの情報を統合した形で記載しており、CEOメッセージにもある「経済・環境・社会の3軸経営深化」を実現しようとしています。
出所:三井化学レポート2020
最後に
三井化学のESGに関する取り組みと、対外的に評価を受けているポイントをまとめましたが、いかがでしたでしょうか。三井化学は自社独自のESG指標を社内に浸透させるべく、様々な工夫を凝らしているといえそうです。
次回はリコーのESG開示分析です。お時間がある方は第1回の伊藤忠の記事も是非ご覧ください。
【ESG 企業分析③】ESG指標と賞与が連動!リコーの徹底したESG取り組み姿勢
【ESG 企業分析①】運用機関からの評価はNo.1!伊藤忠商事のESGへの取り組み
よろしくお願いします!
—————————-
日本最大級のESGメディアであるESG Journalを運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社では、統合報告書を発行している主な日本企業100社ののESGに関する評価やIndexの組み入れ先、各種データの参照をまとめたESGコンプス(ESG開示に関する企業比較)を無料で提供しています。
こちらを見ることで、今ESG開示において最も評価されている企業100社がどのような開示を行っているかを把握することが可能です!もしご興味がある方は、是非以下のリンクからダウンロードしてください!
【無料ダウンロード】 ESG開示に関する上場企業100社比較データ