マテリアリティって何?ESG情報開示との関係性

こんにちは!ESG Journal Japan編集部です!

企業のESGへの取り組みに対する関心が国内外で急速に高まってきています。統合報告発行書の発行社数は年々増え、2020年12月末には591社となっており、統合報告書を発行している企業の株価はTOPIXを大きくアウトパフォームしています。

統合報告書を発行している企業がESG情報開示において何を参照しており、どのような部分を課題と感じているのか。そしてESG情報開示において最も重要な「マテリアリティ」について、本日は詳しく解説したいと思います。

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出所:「統合報告書発行状況調査2020」㈱ディスクロージャー&IR 総合研究所・ESG/ 統合報告研究室

ESG情報開示において重視すべき項目

ESG情報開示は何から始めるべきでしょうか。まだ何も取り組んでいない企業にとっての最初の壁は「複数のガイドラインの存在」です。特にESGの開示には決まったフォーマットがなく、多くにスタンダードやガイドラインが存在しているため、何を参考にしたらよいか迷う、という声が多く聞かれます。(乱立する情報開示基準の概要に関しては、こちらの記事でまとめています。)

一方で、主要なガイドラインに共通する項目は以下5つと言われています。何から始めていいか良くわからない!という場合にはこの5項目に絞って検討を行うことが良いでしょう。

1. ESGリスク・機会の認識等
2. マテリアリティの特定
3. (特定したマテリアリティに対する)戦略・取組み等
4. KPIの設定
5. ガバナンス

またGPIF・大和総研の整理によると、各5項目の関係は以下のようになっています。「気候変動シナリオ分析の活用」に関しては、投資家の最も関心の高いESGテーマであり、最初の分析として取り組むべきと言われています。

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出所:大和総研

一方で既にこれらの開示を開始している企業は、マテリアリティやリスク分析の部分で、十分な説明を行えていない、と感じているようです。

「日本企業の統合報告に関する調査2019」の結果を見ると、ビジネスモデルの持続性の観点で「マテリアリティ」を説明している企業は35%に、「マテリアリティ」と関連付けて「リスクと機会」を説明している企業は22%にとどまります。こうした結果を合わせてみると、これらの領域における説明の拡充が、今後の課題であることがわかります。」

出所:KPMG「日本企業の統合報告の取り組みに関する意識調査2020
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出所:KPMG「日本企業の統合報告の取り組みに関する意識調査2020

マテリアリティとは?

そもそもマテリアリティとはなんでしょうか。ESG開示の世界ではそのまま使われてしまっていますが、一言でいうと「様々なESG課題の中で自社が優先して取り組むべき重要な課題」です。

情報開示基準の世界において求められるマテリアリティには、環境・社会問題が企業活動・業績に与える影響と、企業活動が環境・社会に与える影響という二面性があります。この内、環境・社会問題が与える企業業績等への影響だけを重視する考え方を「シングルマテリアリティ」企業活動が与える環境・社会への影響を含む双方向のマテリアリティを重視する考え方を「ダブルマテリアリティ」と呼びます。

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出所:大和総研

どの開示基準に準拠するのかにも拠るのですが、投資家を主な開示対象とするIIRC等の基準は、環境・社会問題の財務への影響を投資家に伝えることを重視するため、シングルマテリアリティの考え方を取ります。一方で、GRIスタンダードなどより広いステークホルダーへの開示を想定する場合は、環境や社会への企業活動によるインパクトを伝える必要があるため、ダブルマテリアリティの考え方を取るようです。

このマテリアリティの特定が難しい、と言われる理由は環境・社会問題の財務への影響を可視化しにくい、という点に起因しています。

マテリアリティの選定フロー

ではこのマテリアリティの選定はどのように進めれば良いのでしょうか。選定フローは以下図のように、大きく3工程に分けて進めていきます。まず①社会的な課題をサステナビリティの指標やSDGs等を参考に網羅的に抽出した上で、②その中から優先順位付けを行い、③最後にいくつかの重要課題に絞り込むと良いでしょう。

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出所:大和総研

優先順位付けにおいては、社会的に重要な項目と寺社によって重要な項目を2軸にプロットするマトリクスなどを活用すると良いと言われています。

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実際のマテリアリティの特定事例

そうはいっても、企業が実際どのようにマテリアリティを特定しているか見てみないと分からない。。。という方も多いと思いますので、個別企業のマテリアリティ特定プロセスとIR事例を別コラムでまとめてみました。

第一弾として、ESG経営に力を入れている不二製油グループのマテリアリティ特定プロセスを取り上げましたので、興味のある方は以下よりご覧ください!

取締役にC”ESG”Oが存在!不二製油グループが力を入れたマテリアリティ特定プロセス

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日本最大級のESGメディアであるESG Journalでは、統合報告書を発行している主な日本企業100社の採用しているESG情報開示基準やIndexの組み入れ先、外部からのESG開示評価をまとめたESGコンプス(ESG開示に関する企業比較)を無料で提供しています。

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次回も上場企業のESG開示やESGの最新トレンドについて、詳しく紹介していきたいと思います。

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