
8月28日、米国の核融合スタートアップであるCommonwealth Fusion Systems(CFS)は、シリーズB2ラウンドで8億6,300万ドル(約1,300億円)の資金を調達したと発表した。これは、ディープテックおよびエネルギー領域では2021年に同社が調達した18億ドルに次ぐ過去最大級の調達であり、同社の累積調達額は約30億ドル(約4,400億円)に達した。これは民間核融合市場の約3分の1を占める資本規模であり、CFSの業界内リーダーとしての地位を強く印象付けている。
本ラウンドでは、グーグルやモルガン・スタンレーのCounterpoint Global、著名投資家スタンレー・ドラッケンミラーなどが出資した。加えて、日本からは三井物産と三菱商事が主導する12社コンソーシアム(関西電力、JERA、NTTなど)が参加し、グローバルな投資基盤が大きく広がった。CFSは、この資金を用いてマサチューセッツ州でのSPARC核融合実証機の完成、およびヴァージニア州に建設予定の初の商用核融合発電所ARCの開発を進めるという。
CFSのボブ・マンガードCEOは「私たちは明確な技術的進展と実行力を示しており、投資家は核融合が現実になると確信している」と述べた。加えて、グーグルはこのARC発電所の出力の半分を購入する契約を締結しており、再生可能エネルギーの次なる柱として核融合の商用化が現実味を帯びてきている。SPARCでは、高温超電導磁石の技術的ブレークスルーを軸に、従来よりも小型かつ効率的な核融合装置の開発が進んでいる。
この動きは、持続可能な未来への移行という文脈においても重要である。従来の再エネと異なり、核融合は昼夜・天候に左右されずに膨大な電力をクリーンに供給可能であり、エネルギー安全保障や電化・AIによる電力需要の急拡大にも対応可能だとされる。特にScope 1〜3の脱炭素目標を持つ企業にとって、将来的に核融合電力のオフテイク契約が新たな排出削減オプションとして浮上する可能性もある。世界初の核融合発電所の建設が現実のものとなれば、クリーンエネルギーの定義そのものが再編される契機となるだろう。
(原文)Commonwealth Fusion Systems Raises $863 Million Series B2 Round to Accelerate the Commercialization of Fusion Energy
(日本語参考訳)コモンウェルス・フュージョン・システムズ、核融合エネルギーの商業化を加速するためシリーズB2ラウンドで8億6,300万ドルを調達