【独占取材】社内外でのESG・SDGsの浸透・啓発に奮闘中!広報・サステナビリティ推進部が果たす役割とBRIDGEs【第3回】

2021年現在、大企業をはじめとする多くの企業がESG・SDGsへの取り組みを加速させている。その中で企業の若手・中堅メンバーはESG・SDGsについて何を思い、どのように社内外の活動に向き合っているのだろうか。ESG Journal Japanは、大企業の若手・中堅有志団体の実践コミュニティ「ONE JAPAN」から生まれた、ESG・SDGsに取り組むプロジェクト「BRIDGEs by ONE JAPAN」11名のメンバーに取材した。

第3回インタビューでは、所属企業で広報・サステナビリティ推進部署に所属し、ESG・SDGsへの浸透・啓発に奮闘する2人のBRIDGEsメンバーに「サステナビリティ・広報 × ESG」という視点から多くのことを語って頂いた。

香西 直樹:中外製薬株式会社 広報IR部
冨樫 朋美:損害保険ジャパン株式会社 サステナビリティ推進部 課長代理

広報だからこそ感じられたBRIDGEsの存在意義や地域への発信の大切さ

ー BRIDGEsのこれまでの活動やイベントにおける2人の主な役割を教えて下さい。

「BRIDGEsのコンセプトを最初にしっかりと決めたことで広報としても一貫したメッセージを発信することができた。」と話す香西氏

【香西】私はBRIDGEsの中でも主に広報を担当しています。BRIDGEsの母体となる、大企業の若手・中堅社員の実践コミュニティ「ONE JAPAN」でも広報を担当しており、その経験も生かしながら「BRIDGEs by ONE JAPAN」という新しいプロジェクトの発足やイベント告知のSNS等の発信を行っています。

6月に開催したオンラインイベントの2、3ヶ月前から、イベント告知の準備を本格的に開始しました。その際にまず最初に明確にする必要があったのが「自分達は何者で、何をやるための団体なのか。」というコンセプトの部分。BRIDGEsの存在意義とは?イベントで成し遂げたいことは?といった部分をコミュニティメンバー全員で(オンライン上で)膝を詰めて話し合いました。これまでの記事でもBRIDGEs誕生の経緯をお伝えしてきましたが、コンセプトを最初に明確に定めたことで、イベント告知や当日に、一貫したメッセージを発信することができたと感じています。

また実務面ではメンバーで世界観を擦り合わせながら、デザイナーの方にもご協力いただき、団体・イベントのデザインやビジュアルを作り上げました。それぞれに人脈や得意分野があったので、皆の力を借りながら資料や告知文、案内状を取りまとめていきました。

【冨樫】私はイベントのロジ面を中心に担当しました。1,000人規模のオンラインイベントかつ複数のセッションを同時並行で走らせたので、滞りなくイベントが進むように全体の動線を明確にし、各セッションの進行や登壇者のフォロー体制などを丁寧に設計しました。セッションを同時並行で行ったことで、もう片方のイベントも見たかったというアンケートも多く頂いたのですが、自分達が成し遂げたかった次のイベントへの参加の動機づけも達成できたと感じています。

広報面でいうと、告知文や案内状を自社の広報部に協力を仰ぎながら対外的に発信しました。弊社の広報部は幅広いメディア関係者との幅広いネットワークがあり、今回のイベントを積極的に告知することができました。集客にも一定効果があったものと思っており、社内の協力体制には感謝しています。

ー イベント後の周囲からの反応はいかがでしたか?印象に残ったものがあれば教えて下さい。

「今後はSNSやネットワークを活用しながら地域にも活動を発信していきたい」と話す冨樫氏

【香西】後日アンケートを含め、全体的にポジティブな反応を多く頂きました。その中でも意外だったのが、イベント内容に関する感想だけでなく、「こんな熱い想いを持った人たちが、どうやって繋がってこのような大規模なイベントを実現できたのか、不思議だし羨ましい。」という声があったことです。BRIDGEs立ち上げから1年間、50回以上のオンラインミーティングを重ねて、社内の人よりも多くの時間を共に過ごしていたのですが、自分達の結束や一体感がイベントを通して伝わったのだと思うと嬉しかったですね。

【冨樫】弊社は全国に拠点があるのですが、今回のイベントには、全国各地の様々な職種の社員が参加をしてくれました。イベントが終わって一番最初に岡山県の社員から「自分ごと化することの大切さ、一人一人が今日から何か行動を起こすこと、それを広げていき、継続していくことが大事だとわかりました。」と連絡をもらいました。地域の社員にこのような感想を持ってもらえたのもそうですし、それを我々にフィードバックしてくれたというのも凄く嬉しかったです。

この分野での仕事に従事していると、サステナビリティやSDGs関連のセミナー情報や国際動向などを自然と目や耳にしますが、地方に行けば行くほどこれらの情報は中々入ってこないのかもしれません。今後は幅広い業種やさまざまな地域の方々に届くような情報発信が必要だと感じましたし、今回は社内SNSやネットワーク等を利用しながら地道に発信したことが一つ実を結んだと思っています。

ESG・SDGsの浸透・啓発に注力する日々

ー 普段、広報担当として普段ESG・SDGsに関連するどんな仕事をしているのでしょうか。

【香西】私は広報IR部という部署で、主に社内広報を担当しています。当社は2019年に発表した中期経営計画において、経営の基本方針として「当社と社会の共有価値の創造」を掲げ、自社の発展だけでなく、社会課題の解決や社会の発展にも貢献していく方針を明確にしました。私は社内広報の担当として、経営企画部やサステナビリティ推進部といった部署と連携し、経営方針や具体的な取り組み事例を社員に伝える、という仕事をしています。

最近では、社長や関連部門の組織長が社員向けにテーマ別にオンラインでライブトークを行い、トップの考えや想いを直接伝えたり、リアルタイムで社員からの質問にも答える、そういった社内イベントも企画・実施していますね。

【冨樫】私は、今年の4月に発足したサステナビリティ推進部に在籍しています。これまでは社会貢献の要素が強いCSR(企業の社会的責任)の一環として取り組む、という位置付けだったのですが、企業の戦略としてサステナビリティに取り組み、社会価値と経済価値の両方を出すという方針になり、サステナビリティ推進部に名称変更しました。

最近ではSDGsに関してお客様から色々な照会を受けたり、社員からもSDGsをキーワードにしてお客様と共創したいという声が寄せられることがかなり増えてきており、社内外のSDGsやサステナビリティへの浸透に向けて、発信していかなければと思っています。

ー ESG・SDGsへの取り組みの加速は感じていますか?

【冨樫】はい。昨年までは大手の企業様からESGやSDGsをテーマにディスカッションをしたい、という内容が多かったのですが、現在は、地方自治体や地域の自動車ディーラーを担当している営業担当等からSDGsに関連した提案や共創をしたいという要望が増えています。

一方で、SDGsについて何をしたらよいかよくわからないというお客様も一定数いらっしゃるので、サステナビリティ推進部では、SDGsの基礎的な説明から弊社と組むとこういう取り組みが出来る、といった提案書を用意し、営業担当と二人三脚でお客様に対応しています。

【香西】当社では、ある社員からの提案により、SDGsの理解を深めるワークショップや、社員から事業アイデアを募集するSDGsコンテストを実施するなど、ボトムアップの取り組みが継続的に行われるようになりました。私も社内イントラでの周知や社内報での紹介など、一緒に推進しています。社員のSDGsに関する理解は進み、社会課題解決のためにアイデアを提案しようという機運の盛り上がりを感じています。

ー ESG・SDGsを会社のストーリーやパーパスとして説明する必要がでてきている、ということでしょうか。

【香西】そうですね、数年前までは医薬品を開発して患者さんに届けるというコアの事業活動と、それとは別にCSR活動や社会貢献も実施しているようなイメージでした。今では、当社独自の強みやビジネスモデルを生かし、イノベーション創出により社会課題の解決を目指す、という考え方に変わってきています。私たちにとって重要なステークホルダーは患者さんです。医薬品で病気の治療に貢献するだけでなく、患者さんの気持ちにも思いを馳せ、日常生活や就業継続に必要な情報提供なども含め、一人ひとりの患者さんの健康と幸せを最優先に考え、社員一人ひとり仕事に向き合っています。

【冨樫】我々も同様です。保険会社には事故や災害があった時に保険金をお支払いするという役割がありますが、そもそも事故や災害が起こらない仕組みを作るということも損保会社としての使命であり、そういった防災・減災に力をいれていくことがサステナビリティや企業の存続に繋がっていく、と考えています。

世の中をみても、気候変動による自然災害が増えており年々保険金の支払額も増えている、という現実があり、何もしないままだと会社の存続に影響があるというのが社員の危機感としてもあるように思います。

ー 社内でのESG・SDGsに関する取り組みは社外(投資家やESG評価機関等)からどのように捉えられているのでしょうか。

【冨樫】ESG・SDGsに関する取り組み状況を伝えるだけでは評価されなくなってきているのではないでしょうか。先程のストーリーの話にも繋がってきますが、私達はなんのためにESG・SDGsに取り組んでいて、社会に対して今後こういうインパクトを出していきたい、価値を提供していきたい、という文脈でないときちんと評価してもらえないなと。

【香西】当社では投資家やメディアを対象にサステナビリティに向けた経営方針や戦略、具体的な取り組みを紹介する「ESG説明会」を行っています。また、ウェブサイトにおいて「サステナビリティ」に関する情報を充実させることにも力を入れています。それでも、ESG・SDGsに関する実態は、社外の方からは見えづらいのではないかと思います。

そこで、外部機関による評価が指標になります。世界の代表的なESG投資指数である「Dow Jones Sustainability Indices(DJSI)」は、聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。企業活動の実態を問うための膨大な質問に対して、エビデンスの提示と共に回答します。私も自社のDJSI 回答作成に携わった経験がありますが、「ごまかしが効かず、質問に対してエビデンスと活動実態が無いものは回答できない」と感じました。ESGを評価する外部機関はいくつかありますが、客観的な評価として参考になるのではないでしょうか。

ー 非財務情報を全社横断で集めて開示する、というプロセスが非常に大変だという話もよく耳にします。

【香西】先ほどお話したDJSIのような外部機関からの調査は、ESGに関する活動実態や実績データを集める必要があるため社内の多くの部署の協力が必要不可欠です。ヒアリングする側もされる側も、大きな負荷がかかります。経営層の理解と社内への協力の呼びかけがあったおかげで、多くの部署の協力を得ることができ、企業活動を正しく回答に反映することができ、高い評価を得ることができました。

【冨樫】企業としてビジョンやミッションのもと、取り組んでいることをしっかり開示することは重要と捉えています。また、できていることだけでなく、課題と感じていることやこれからやろうと思っていることも情報を出していくことも大事なのかなと。そのような企業姿勢を、様々なステークホルダーから評価いただけるものと思っています。

ESG・SDGsのプロフェッショナル人材になりたい

ー 広報という立場から今まさに変化の真っ只中で奮闘されている状況かと思いますが、今後社内・BRIDGEsとして取り組みたいことを教えて下さい。

【冨樫】社内では、特に地域で働く社員に、保険だけでない価値あるものを地域に還元していかないと自分たちの存在意義がなくなる可能性がある、ということを認識してもらいたいと思っています。また各地域からそういう社会課題の解決に取り組み、社会価値を創る事業が生まれるような活動を実施し、賛同してくれる仲間を増やす、橋をかけるということに取り組みたいなと。

個人としては、BRIDGEsのメンバーや多くの人から情報・ノウハウを得ながら、ESG・SDGsに関する知見を社内に還元しつつ、プロフェッショナルな専門人材になりたいと考えています。BRIDGEsの中でもテーマ別に何か事業を興そうという話をもっと増やし、色々な活動に参加していきたい、というのが当面の目標です。

【香西】先日のオンラインイベントにて水野弘道さんや小泉環境大臣が仰っていた、「一人ひとりが自分ごと化して何ができるかが大事」というメッセージがとても印象に残っています。企業人として社員一人ひとりがESG・SDGsにおいて何ができるかを、社内でディスカッションしたいですね。研究・開発・生産・営業など、自社の各機能においてESG・SDGsをどう自分ごと化して何に取り組んでいけるか、を一緒に考え、語り合える場を作りたいです。

個人としては、この分野はまだ発展途上で、誰でも勉強と実践により専門家になることができる領域だと思っていて、私自身がESG・SDGsにおいて最も解決すべきと思える課題を探すというのが当面の目標です。そして自分の中でこれだ、と思うものを見つけた際には日々その解決に没頭し、ライフワークにしていきたいと考えています。

ありがとうございました。BRIDGEs、広報という立場からESG・SDGsの浸透・啓発に取り組むお二人の活躍に今後も注目していきたいと思います。次回は新規事業×ESGというテーマで新たなBRIDGEsメンバーにお話を伺います。

<前回記事>

【独占取材】小泉環境大臣も登壇!1,000名以上が参加したオンラインイベント「BRIDGEs 2021 - ESG&SDGs Meeting -」開催の裏側【第2回】

【独占取材】大企業の若手・中堅がESG&SDGsに本気で取り組む!「BRIDGEs by ONE JAPAN」プロジェクトとは?【第1回】

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