気候変動シンクタンクE3G、日本のアンモニア混焼石炭火力発電を批判

4月17日、気候変動シンクタンクE3Gは、新しく発表したレポートの中で、日本の官民が推奨するアンモニア混焼石炭火力発電は気候変動緩和のソリューションとはならないと批判した。

本レポートは、日本政府と産業界が、石炭火力発電所におけるアンモニア混焼を、気候変動緩和のためのソリューションとして提唱していることに関し、同アプローチは、実現可能性に乏しい不確実な将来の技術オプションを推進し、石炭火力発電所を段階的に廃止するために必要な明確な政策行動を遅らせるものであると述べた。また、石炭火力発電所でのアンモニア混焼は、世界の気温上昇を1.5℃以下に抑えるための道筋と矛盾していると指摘し、日本や東南アジア諸国におけるクリーンエネルギーへの移行を損なう危険性があるとした。

本ブリーフィングは、アンモニアを石炭と混焼して発電することが気候や経済に与える有害な影響について概観している。また、同技術を推進するために石炭推進派が使用する論拠を明らかにし、強固な対応策を提言している。

本ブリーフィングでは、以下のような主要な提言を行っている。

  • アンモニア混焼は、効果的な排出削減技術とはみなされるべきではない。
  • 政府は、石炭との混焼におけるアンモニアの使用を排除するために、早期に行動を起こすべきである。
  • リスクがあるにもかかわらず、アンモニア混焼の導入を検討する場合は、G7でも強調されているように、パリ協定の目標である温暖化を1.5℃に抑えるという目標に沿ったものでなければならない。これには、石炭発電所からの生涯排出量と、アンモニアの製造、輸送、貯蔵のライフサイクル排出量の評価が含まれるべきである。
  • 電力部門に対する多国間融資ツールの範囲から、混焼を除外すべきである。
  • 各国政府は、グリーンアンモニアの使用を、肥料生産の脱炭素化など、最も気候変動に恩恵をもたらすことができる部門に戦略的に優先させるために協力すべきである。混焼用アンモニアを推進することは、アンモニアのサプライチェーンに圧力をかけ、他のセクターの排出削減を遅らせるリスクがある。
  • 各国政府は、アンモニアの生産と使用について、ライフサイクルの全排出量を組み込んだ強固な炭素強度基準を確立するために協力するべきである。

【参照ページ】
(原文)Challenging Japan’s promotion of ammonia co-firing for coal power generation
(日本語訳)日本の石炭火力発電におけるアンモニア混焼の推進に挑む

関連記事

おすすめ記事

  1. TCFD・IFRS・CSRDの移行計画とは:業界別に考える開示ポイント

    2025-7-10

    TCFD・IFRS・CSRDの移行計画とは:業界別に考える開示ポイント

    ※本記事は2024年10月の内容にGX-ETSに関する内容を追記し再掲載している。(2025年7月…
  2. TNFD開示を支援する 主要ツール比較と選定ポイント

    2025-6-11

    TNFD開示を支援する 主要ツール比較と選定ポイント

    2024年にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-…
  3. 進化するサステナビリティ開示 ― 傾向から考える“自社の対応状況”

    2025-6-6

    進化するサステナビリティ開示 ― 傾向から考える“自社の対応状況”

    サステナビリティ情報開示の高度化が急速に進んでいる。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)…

ピックアップ記事

  1. SSBJ(気候関連開示基準)とGX-ETSの共通点とは?~比較解説と実務効率化~

    2025-8-14

    SSBJ(気候関連開示基準)とGX-ETSの共通点とは?~比較解説と実務効率化~

    日本企業にとって、2026年から「気候変動対応・開示」は、企業価値を左右する重要な経営課題になるで…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 2025-8-11

    バークレイズ、サステナブルファイナンスで累計2,200億ドルを達成

    7月29日、英国大手銀行バークレイズは、2025年上半期のサステナビリティ投資家向けプレゼンテーシ…

““登録02へのリンク"

ページ上部へ戻る