EYサーベイ:機関投資家は投資資金の流入によるグリーンバブルを懸念

 

11月3日、EYは、ESGパフォーマンスに対する投資家の視点や、投資の意思決定および長期的な投資管理におけるESGの役割について調査した「2021 EY Global Institutional Investor Survey」を発表した。本調査では、投資家がESGのリスクと機会を考慮して投資活動を行うようになってきていることが明らかになった一方で、企業によるサステナビリティレポートの改善や、ESGパフォーマンスを評価するためのより洗練された分析ツールの必要性が強調されている。

この調査のために、EYは、銀行、保険会社、年金基金、ファミリー・オフィスなど、ファンドのAUM規模や機関の種類が多岐にわたる、世界中のバイサイド機関の320人以上の上級意思決定者に調査を依頼した。

今回の調査では、昨年の出来事を受けて、投資家のサステナビリティへの関心が急激に高まっていることがわかった。90%の投資家が、COVID-19の大流行以降、投資戦略や意思決定の際に企業の「ESGパフォーマンス」をより重要視するようになったと報告している。また、COVID-19の流行以前と比較して、高いESGパフォーマンスに基づいて投資を継続する可能性が86%、低いESGパフォーマンスに基づいて投資を売却する可能性が74%になったと回答している。

今回の調査では、ESG、特に気候変動への配慮が、リスク管理のためだけでなく投資家にとってのチャンスの源泉としても利用されるようになってきていることが示された。今回の調査では、資産配分や資産選択の際に、物理的な気候変動リスクには77%、移行リスクには79%の投資家が相当な時間と注意を払う予定であることがわかった。

また、投資機会については、92%の投資家が「グリーン回復による利益を期待して投資を行った」と回答し、88%の投資家が「グリーンに焦点を当てた投資機会をますます狙うようになるだろう」と回答した。しかし、この分野への投資資金の流入により、一部の投資家は、特に投資の選択肢が限られていることから、バリュエーションへの影響を懸念している。4分の3以上の投資家が、グリーン投資の不足が市場のバブル化のリスクを生む可能性があると回答している。

EYの調査では、企業の情報開示だけでなく、投資家自身のデータ分析能力の向上という点でも、ESG情報の改善に対する投資家の強い関心が明らかになった。調査回答者の半数以上が、企業がどのように長期的な価値を生み出しているかについての情報が不足しているとESG開示の有用性が損なわれると回答し、50%が企業のESG報告において重要な課題に焦点が当てられていないことを懸念していると報告している。

また、報告の義務化や標準化を求める声も急増した。89%の投資家が、世界的に統一された基準に照らしたESGパフォーマンスの報告を規制当局が義務付けることが有用であると回答したが、前回の調査では74%にとどまった。この結果は、IFRS財団が今週、国際サステナビリティ基準委員会を設立したことと一致している。

投資家は、増加するESG報告書やデータをよりよく管理・活用するために、分析ツールやソリューションへの投資を増やしたいと考えている。現在、ESGの開示情報やデータの分析・評価について「成熟度の高い」アプローチをとっていると回答したのは半数以下で、75%がデータ管理や高度な分析ツールへの大幅な投資を検討していると回答している。

【参照ページ】
 2021 EY Global Institutional Investor Survey

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