国際認証ラベルの取得は企業にとって負担?メリットと負担軽減策を解説。

近年、国際認証ラベルの付いた商品が普及し、企業が国際認証ラベルを取得する重要性が高まってきている。しかし、国際認証ラベルの取得には、定められた手順が必要で、手間がかかるという印象があるかもしれない。そこで、本稿では、国際認証ラベル取得のメリットや課題、さらには手続きの負担の軽減方法を紹介する。

国際認証ラベルとは

国際認証ラベルとは、人や地域、社会、環境に配慮した製品であることを証明する国際的なラベルである。別名「サステナブルラベル」とも呼ばれる場合もあり、よく耳にすることもあるだろう。認証ラベルを取得するには、第三者機関による製品の「安全性や品質」に関する基準に基づいた審査が必要となる。この審査に合格した商品のみに「認証ラベル」が与えられている。

国際認証ラベルの種類について

国際認証ラベルとは、制度として取得が義務化されているわけではない。任意の認証ラベルであり、世界に少なくとも450以上あると言われている。すべての種類を個別に把握することは難しいので、多くの種類がある中、環境ラベルと包括的なラベルの違いがあることを把握しておくとよいだろう。

・環境ラベル

製品やサービスが環境負荷の低減にどのように貢献しているかを示すマークである。各国の代表的標準化機関から成るISO(国際標準化機構)では、環境ラベルを「第三者認定によるもの」「自己宣言によるもの」そして「製品の環境負荷の定量的データを表示するもの」の3つのタイプに分けて規格を制定している。

・包括的なラベル

社会的にも配慮された商品やサービスにつけられるラベルである。環境だけではなく、人権への配慮など社会への影響や負荷の低減を実現したことが示される。

関連記事:エシカルな指標の一つに。企業が認証ラベル取得を目指すメリットと注意点とは?関連記事:今や取得が当たり前?サステナビリティに関する主な認証ラベル・制度:Part1

社会から求められる背景について

2015年に開催された国連総会にて、193カ国が賛同した国際目標であるSDGsの17の目標を達成するためには、個人の行動も重要であることが提唱された。そして、個人が取り組みやすいアクションの1つとして、「エシカル消費」が求められるようになった。

社会的課題の解決を考慮したり、課題に取り組む企業や団体を応援しながら消費活動を行ったりするためには、国際認証ラベルのついた製品の普及は欠かせない。認証ラベルを取得する事業者が増えると、環境や社会に配慮していない不適切な製品が淘汰されていく可能性があり、目標の実現が達成されることが期待できるだろう。

また、近年では、新しい開示基準においてサプライチェーンでのサステナビリティが求められている中、調達・原料の安全性やサステナビリティをを示す手段の一部として、ラベルの取得が活用できる場合もある。

参考:国際認証ラベル一覧と意味を解説!売っている場所も

国際認証ラベル取得のメリット

国際的にも、消費者にも関心が高い認証ラベル。取得のメリットは、次があるだろう。

  • 消費者からの認知度の向上
  • サプライチェーンリスクの低減

消費者からの認知度の向上

認証ラベルを取得するメリットは、社会課題解決への姿勢を消費者にアピールできる点である。認知されている認証ラベルがあることで、消費者は企業が社会課題に貢献しているかを意識することができる。そして、貢献度の高い企業の商品やサービスを購入する傾向がある。認証ラベルは、企業のサステナビリティへの貢献を直接的に伝え、消費者の購買意識を高めることができる。また、企業サイトにおいても、商品やサービスが認証ラベルを取得したことをアピールすることもできる。消費者によっては、商品やサービスがサステナブルであるかどうか情報を企業サイトから得ることもあり、一定の効果を期待できるとの考え方もある。

参考:エシカルな指標の一つに。企業が認証ラベル取得を目指すメリットと注意点とは?

サプライチェーンリスクの低減

もうひとつのメリットは、サプライチェーン上の社会・環境的なリスク回避をできる経営体制であることを対外的に示すことが可能な点だ。近年、サプライチェーン全体を通して環境や人権問題などに対応ができているか、関心が高まっている。認証による監査を受けることで、実質、高い基準に基づいた運営が示されることになる。

サプライチェーンリスクの管理は、国際的には制度化が進みつつあるので、こうした要請への対応としても認証取得は活用できるだろう。なお、リスクの高い国・地域でビジネスを行う企業は、認証制度を重視する必要があるだろう。国際的な取引の管理として認証取得による信頼を獲得することも可能だ。

参考:【選ばれる企業へ】認証ラベル取得によるサステナブルブランディングとエシカル消費促進

国際認証ラベルの取得の課題

認証ラベルの取得には、第三者機関による認定プロセスがあるためハードルが高いと感じる場合も多いだろう。多くの企業が直面する認証ラベル取得の課題としては、以下が共通して散見される。

  • コストや負担がかかる
  • グリーンウォッシュに気を付ける

コストや負担がかかる

認証ラベルを取得する際には、コストと時間がかかると考えられる場合が多いだろう。たしかに、認証取得プロセスには、審査費用や調査・監査の費用のほか、内部で必要な文書の準備や提出にかかるコストや時間がかかる。特に、認証基準を満たすために、仕組みや規程などが整備されていない場合には、一から作り上げることになる可能性もあるので、認証ラベルを取得したいとなったタイミングからすぐに対応できないリスクもあり注意が必要だ。

また、取得後も、定期的な要件を満たし続ける必要がある場合があり、追加のコストと労力が必要になることもある。リソースを確保できる状況にある場合は、分担することも可能だがそうでない場合もある。

しかし、最近では、AIなどを活用したデータ管理ツールもあるので外部ツールの活用など、負担の軽減が可能になりつつある。認証取得だけのためでなく、企業のサステナビリティ向上に向けた最適なデータ管理を日常的に実施するとよいだろう。

グリーンウォッシュに気を付ける

認証ラベルを取得する際には、「グリーンウォッシュ」とならぬよう気を付けることが重要である。グリーンウオッシュとは、環境や社会課題に対応しているように見せかける行為だが、「取得」だけして、実質が伴っていないと見せかけと誤解されてしまう可能性がある。

現在、認証ラベルの種類が多くなっているため、どのラベルがどのように環境に優しい商品なのか判断するのが難しくなっている。消費者は意識的に環境に配慮した商品を選びたいと思う一方で、認証ラベルの信頼性に疑問を持つケースも増えている。

企業が認証ラベルを取得する際には、そのラベルが信頼性のある機関によって適切に審査されていることを確認する必要がある。さらに、取得した後も定期的な監査や評価が行われる認証ラベルを選ぶことで、グリーンウォッシュとなることを避け、本質的に貢献している商品として消費者に信頼を得ることが重要だ。

参考:エシカルな指標の一つに。企業が認証ラベル取得を目指すメリットと注意点とは?

国際認証ラベルの負担を軽減するには

認証ステップの概要の把握

認証ラベルを取得する際の負担を軽減するためには、認証ステップがどのような流れであるのか、一般的な理解をもっておくとよいだろう。認証ラベルの種類によって細かな基準や細かな相違(実査の有無など)があるが、共通する部分も多い。下記ステップを踏まえて、効率化できそうなステップを事前に認識しておくと、取得の負担が軽減されるだろう。

  1. 認証機関の選定:認証審査を実施できる認証機関を選定する。
  2. 資料の用意/データ管理:登録申請に必要な資料の用意とデータ管理を行う。
  3. 登録/申請:申請書を提出。
  4. 監査・実査:認証機関により監査手順に基づき適合状況の検証が行われる。
  5. 認証/認証書の受け取り:認証機関から組織へ認証書が送付される。
  6. 認証関連書類の検証:監査文書に未記入の箇所がある、もしくは間違いが含まれている場合、問い合わせがある。
  7. 認定:監査手順のレビュー後、正式に認証される。
  8. 更新審査:認証ラベルの有効期限(5年など)が切れる前に、認証機関に更新審査を依頼する。※場合によっては、更新審査が行われるものもある。
参考:ISCC/ISCC PLUS認証(持続可能性カーボン認証)

日常的なデータ管理の重要性

国際認証ラベルの認証を取得するために資料やデータを整えるだけでなく、日常的にESG情報を管理することで効率化が実現できる。むしろ、認証ラベル取得のためだけに、データや資料をそろえるのでは、コストパフォーマンスがよくない場合もある。企業のサステナビリティ開示(報告)のためや、その他外部評価機関からの問合せへの評価など、包括的にサステナビリティへの対応に活用できるデータ管理ツールがあるとよいだろう。最近では、AIを活用したサステナビリティに特化したものもあり、持続可能な経営を目指す企業にとって重要なサポートとなるだろう。

まとめ

国際認証ラベルは、消費者に選ばれる商品を提供するために今後も取得の輪が広がっていくだろう。特に、サプライチェーン管理の一環ともなるので、積極的な取得がこれからも進むだろう。既に、日本でも多くの企業があらゆる国際認証ラベルを取得している。一方で、商品サービスにおいて環境配慮や社会課題対応を示していても、企業活動自体のサステナビリティが示されていないとグリーンウオッシュとなってしまうので注意も必要だ。

今後、新たに国際認証ラベルを取得する際には、まずは社内のサステナビリティに関連するデータ管理が効率化されているかいまいちど確認するとよいだろう。認証ラベルだけのためではなく、他の業務にも活用できるようにテクノロジーを取り入れた取り組みが望ましいだろう。

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