EU ETS無償割当ベンチマーク改訂案を公表 産業界向け配分ルールを見直し

5月12日、欧州委員会は、EU排出量取引制度(EU ETS)における2026〜2030年のベンチマーク値改訂案を公表した。今回の見直しは、産業界への無償排出枠(free allocation)配分を決定する重要な制度改訂であり、エネルギー多消費産業に対して約40億ユーロ相当の支援効果が見込まれている。
EU ETSでは、鉄鋼、セメント、化学、製紙などの産業部門に対し、炭素リーケージ(生産拠点の域外移転)防止を目的として、一定量の排出枠を無償で配分している。配分量は「最も効率的な上位10%の設備」の排出原単位を基準とするベンチマーク方式で決定される。
今回の改訂では、欧州委員会が制度上認められる柔軟性を最大限活用し、14の製品ベンチマークで電力由来の間接排出(indirect emissions)を引き続き考慮する方針を示した。これにより、一部産業では従来想定より多くの無償割当を受けられる可能性があり、2026〜2030年累計で約40億ユーロ相当の追加的な便益につながるとしている。
欧州産業界では近年、高止まりするエネルギー価格や、中国・米国との競争激化を背景に、EU ETSによるコスト負担増への懸念が強まっていた。特に、CBAM(炭素国境調整メカニズム)では、2034年までに無償割当を段階的に廃止する方向であり、産業競争力維持との両立が政策課題となっている。
改訂案は今後4週間のパブリックコンサルテーションと加盟国協議を経て、2026年6月末までに正式採択される予定。さらに欧州委員会は2026年7月にEU ETS制度全体の包括見直しも予定しており、セクター別の補完的ベンチマーク導入(fallback benchmark)など追加的な産業保護措置も検討されている。
原文:Commission presents updated EU Emissions Trading System benchmarks for consultation
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