EU、独の産業脱炭素化支援を承認 総額50億ユーロの国家補助制度

5月7日、欧州委員会は、ドイツの産業部門における生産工程の脱炭素化を支援する総額50億ユーロの国家補助制度を、EUの国家補助規則に基づき承認した。ドイツのエネルギー・気候目標の達成に加え、EU全体の持続可能な成長と競争力強化にもつながる措置と位置付けている。
承認された制度では、産業分野の企業が従来の化石燃料や高炭素原料を、電化、水素、二酸化炭素回収・貯留(CCS)、二酸化炭素回収・利用(CCU)、バイオメタン、排熱回収・蓄熱といった低炭素技術に置き換える大規模な技術転換が支援対象となる。
対象事業は競争入札によって選定される。選定にあたっては、回避される二酸化炭素1トン当たりに必要な補助額を基準に費用対効果を評価する。採択される事業には高い排出削減効果が求められ、4年以内に少なくとも50%、15年間の契約期間終了時までに85%の排出削減を実現する必要がある。
補助は、契約期間15年の「双方向型炭素差額契約(CCfD)」の形で支給される。受給企業への年間支払い額は、EU排出量取引制度(ETS)の排出枠価格やエネルギー投入価格などの市場動向を踏まえ、従来技術とのコスト差に連動して決まる。低炭素生産方式の追加的なコストのみを補填する仕組みで、仮に環境対応型の生産方式が従来より安価になった場合には、企業側が差額を返還しなければならない。
支援対象となるのは、EU ETSの対象業種である鉄鋼などの金属、石こう、ガラス・陶磁器、紙・パルプ、セメント、石灰、化学などの各分野だ。
今回の措置は、欧州委員会が2024年2月に承認した制度に続くもので、2025年3月に承認された別の制度をドイツ当局が実施せず、再設計したうえで置き換える形となる。
欧州委員会は審査にあたり、EU機能条約第107条3項(c)および気候・環境保護・エネルギー分野の国家補助ガイドライン(CEEAG)に照らして評価した。その結果、この制度はETS対象業種の脱炭素化を進めるうえで必要かつ適切であり、公的支援がなければ実施されにくい投資を促す効果があると判断した。
また、競争入札の仕組みによって補助額が必要最小限に抑えられるため、EU域内の競争や貿易への悪影響も限定的だと結論付けた。さらにドイツ政府は、支援による排出削減が単なる部門間の排出移転に終わらないよう担保すると約束。使用する水素についてはEUの再生可能または低炭素水素に関する法令への適合を条件とし、電力使用に伴う間接排出も全体の削減効果に比べて抑制されることを確認した。
EU ETSは、EUの温室効果ガス削減政策の柱とされる制度で、世界初の大規模炭素市場として導入され、現在も最大規模を維持している。EUの「Fit for 55」関連法制のもとで制度見直しが進み、対象分野の拡大や炭素価格付けの強化が図られている。
原文:Commission approves €5 billion German State aid scheme to support decarbonisation of industry
日本語参考訳:欧州委員会は、産業の脱炭素化を支援するための50億ユーロ規模のドイツ政府補助金制度を承認した。
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