11月15日、ビジネスの国連持続可能な開発目標(SDGs)推進国際NGOのWorld Benchmarking Alliance(WBA)と、国際的な環境情報開示推進NGOのCDPは、電力世界大手68社を対象としたサステナビリティ・ランキング「電力会社ベンチマーク2023」の回答結果概要を発表した。本ベンチマークによると、同セクターは低炭素エネルギー転換において重要な進展を遂げているものの、世界的な気候変動目標を達成するためには、さらなるスピードと規模拡大が緊急に必要であることが示された。
評価対象となった68社の風力発電と太陽光発電のシェアは、2017年から2022年の間にほぼ2倍の7%に達した。企業がこのまま再エネ転換を続けた場合、2030年までに7倍の太陽光発電を生産することになり、国際エネルギー機関のネット・ゼロ・の成長要件を上回ることになる。また、過去5年間に石炭火力発電を行った60の評価対象企業のうち、2022年の石炭燃焼量は2017年よりも65%減少し、イベルドローラとSSEの2社はすでに石炭を完全に廃止している。
一方、石炭を段階的に廃止する計画を持っている企業は26社に過ぎず、これは地球温暖化を1.5度に抑えるための国際的な取り組みを著しく阻害していることも指摘。企業は、自然エネルギーが必要なペースと規模で成長するために必要なエネルギー貯蔵と需要管理に注力していないとした。評価対象となった企業の半数以下は、現在、蓄電容量を保有しているか、蓄電容量に投資している。また、現在、蓄電容量を新規または追加で建設中、および/または、蓄電容量を拡大する計画を共有しているのは、わずか31%である。
ベンチマーク全体で最も好調だった企業は、オーステッド、EDP、エネル。上位10社はすべて欧州に本社を置く企業だが、上位3社とそれ以外の企業との間には大きな隔たりがあることが調査で明らかになった。
WBAは、主要電力会社の業績と計画を評価するだけでなく、ゼネラル・エレクトリック、シーメンス・ガメーサ、ファースト・ソーラーなど、エネルギー部門のイネーブラーとして重要な役割を果たしている資本財企業11社のスナップショットも評価した。
移行指標でトップのSSEのスコアは20点満点中12.5点に過ぎず、セクター全体の平均スコアは20点満点中わずか3点。電気事業は、CDPとともに開発されたWBAの「気候・エネルギー・ベンチマーク」で評価されたセクターの中で、石油・ガス会社を含め、現在までにすべての「公正な移行」指標を満たしている唯一のセクターであるとし、エネルギー部門におけるリーダーシップの可能性にも言及した。
【参照ページ】
(原文)As COP28 approaches, research shows world’s electric utilities companies are progressing towards a renewable energy transition but pace of change is too slow
(日本語参考訳)WBA、電力会社ベンチマーク2023の結果を発表 再エネ移行のペースを指摘