8月9日、バイデン大統領は半導体法(CHIPS and Science Act)案に署名し、同法が成立した。本法案は、半導体の生産や研究開発を柱に527億ドル(約7兆円)を超える補助金を投じるものである。
米国は、世界の半導体生産量の75%を東アジアに依存しており、自国の生産量は10%程度しかないことを課題としている。国内の半導体産業に数千億ドルを投資し、生産体制を構築することで、経済安全保障や雇用の創出、カーボンニュートラル等を実現する計画である。
半導体分野での米国のリーダーシップを強化する。
同法は、米国の半導体の研究・開発・製造・人材育成のために527億ドル(約7兆円)を提供する。これには、自動車や防衛システムで使用されるレガシー・チップへの20億ドル(約2,700億円)を含む製造奨励金390億ドル(約5兆円)、研究開発と人材開発への132億ドル(約2兆円)、国際的な情報通信技術セキュリティと半導体サプライチェーン活動への支援として5億ドル(約680億円)が含まれている。
また、半導体および関連機器の製造のための資本支出に対して25%の投資税額控除を提供する。これらの優遇措置により、国内供給を確保し、高賃金の雇用と高スキルの製造雇用を創出し、何千億もの民間投資を呼び込むことができるという。
さらに、これらの資金は、受給者が中国やその他の懸念される国で特定の施設を建設しないことを保証し、企業が納税者の資金を自社株買いや株主配当に使用することを防ぐ、強力なガードレール付きである。また、CHIPSの資金で建設される施設にDavis-Baconの現行賃金率を義務付けることで、労働者の賃金向上を支援する。
ワイヤレスサプライチェーンにおける米国のイノベーションを促進する。
同法には、オープンで相互運用可能な無線アクセス・ネットワークを使用する無線技術の促進と展開のための15億ドル(約2,000億円)が含まれている。
未来の技術における米国のグローバル・リーダーシップを促進する。
同法は、全米科学財団(NSF)に技術・イノベーション・パートナーシップ局を設置し、半導体や高度計算、高度通信技術、高度エネルギー技術、量子情報技術、バイオテクノロジーなどの分野に重点を置く。また、エネルギー省科学局および国立標準技術研究所における基礎研究および用途発想型研究を再承認して拡大し、米国のイノベーションの原動力として科学と工学における米国のリーダーシップを持続させる。
地域経済の成長と発展を促進する。
同法は、全米の地域のイノベーションとテクノロジーの拠点に投資するために100億ドル(約1兆円)を承認する。また、商務省経済開発局(EDA)の10億ドル(約1,300億円)のRECOMPETEパイロットプログラムを認可し、最も困難な状況にあるコミュニティにおける持続的な経済困難の緩和と長期的な総合経済開発および雇用創出を支援する。
STEM分野で高収入の熟練した仕事に参加する機会を提供する。
同法は、幼稚園から高校、コミュニティカレッジ、学部、大学院までのSTEM(科学・技術・工学・数学)教育と訓練への新規および拡大投資を認可している。STEM教育および人材開発活動は、将来のテクノロジーを基盤とした新興産業の高技能職に就くために必要なスキルを身につけるために不可欠である。
STEMとイノベーションにおいて、全米に機会と公平性を推進する。
同法は、歴史的黒人大学(HBCU)やその他の少数民族支援機関を支援し、研究・革新資金の地理的多様性を拡大する。また、科学分野におけるセクシャルハラスメントやジェンダーハラスメントに対処する使命と手段を機関や団体に与える。
【参照ページ】
(原文)FACT SHEET: CHIPS and Science Act Will Lower Costs, Create Jobs, Strengthen Supply Chains, and Counter China
(日本語訳)ファクト シート: CHIPS と科学法は、コストを削減し、雇用を創出し、サプライ チェーンを強化し、 中国に対抗する