PwC、脱炭素化報告書を公表 企業の8割超が気候目標を維持・前倒し

4月28日、PwCは第3回年次報告書「State of Decarbonization Report」を公表し、厳しい事業環境の中でも企業の脱炭素化への取り組みが継続しているとの分析を示した。報告書は、数千社の企業開示資料など数百万件のデータをAIで分析したもの。
PwCによると、調査対象企業の82%が気候目標の達成時期を維持または前倒しした。取り組みを強化した企業は23%で、目標を引き下げた企業の18%を上回った。目標達成に向けて順調に進む企業も、過去の調査より増えているという。
一方、政策支援の縮小や規制の不透明感、エネルギー価格の上昇などを背景に、企業は脱炭素化を単なる社会的責任ではなく、収益性やリスク管理に直結する戦略課題として捉え始めている。PwCは、企業のサステナビリティが「野心の表明」から「財務規律に基づく実行」の段階に移っていると指摘した。
排出区分別では、自社設備からの直接排出であるスコープ1の削減は依然として難しく、目標達成に向け順調な企業は46%にとどまった。購入電力に由来するスコープ2では再生可能エネルギー導入が進む一方、AIやデータセンターの拡大による電力需要増が今後の課題となる。サプライチェーン全体に関わるスコープ3では、56%の企業が設定した削減経路に沿って進んでいるものの、取引先の排出把握にはなお課題が残る。
報告書は、2025年をエネルギー・レジリエンスが取締役会レベルの優先課題となった年と位置づけた。米国と欧州の電力購入契約(PPA)は契約量が19%減、件数が26%減となり、政策支援に頼らない慎重な資本配分が重要になっているという。
サプライチェーンの可視化も課題だ。フォーチュン500企業158社の分析では、一次取引先を超えて取引先の活動や排出量を継続的に追跡している企業は18%にとどまった。PwCは、排出削減効果の大きい領域を把握するためにも、より深い階層までのデータ取得が必要だとしている。
また、製品設計に脱炭素を組み込む動きも広がっている。素材選定や機能設計は製品ライフサイクル全体の環境影響を大きく左右し、サステナビリティを差別化要素とする製品は売上増にもつながる可能性があるという。
AIの活用については、60%の企業が業務上の脱炭素化にAIを使っている一方、排出削減効果を定量化している企業は1%未満だった。PwCは、AIはまず排出データの品質改善や報告業務の効率化で大きな役割を果たすとみている。
報告書は、脱炭素化は圧力の中でも後退せず、むしろ成長、利益率の改善、リスク低減につながる経営戦略として定着しつつあると結論づけた。
原文:PwC’s Third Annual State of Decarbonization Report
日本語参考訳:PwCによる第3回年次脱炭素化状況報告書

