欧州委員会、ESRS改訂・制度化フェーズへ 委任規則案を公表・意見募集開始

5月6日、欧州委員会は、改訂版「欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)」案および中小企業向け自主的サステナビリティ報告基準案に関するパブリックコンサルテーションを開始した(6月3日まで)。今回の見直しは、2026年施行の「Omnibus I簡素化パッケージ」を受けたもので、CSRD(企業サステナビリティ報告指令)の対象範囲縮小と実務負担軽減を反映した内容となっている。

欧州委員会によれば、改訂版ESRSは、必須データポイントを61%削減し、全体の開示項目数も70%超削減する見込みだ。さらに、企業ごとの報告コストは30%超削減できるとしている。EFRAGの費用便益分析では、2027〜2031年累計で約47億ユーロ規模のコスト削減効果が見込まれるという。

改訂案では、「マテリアリティ特定(materiality)」の考え方が大きく整理された。企業は、重要性のない情報については原則として開示しない(shall not)ことが明確化され、過度な情報開示や監査対応を抑制する方向が打ち出されている。また、“トップダウン型”の重要性評価を認めることで、個別論点ごとの詳細評価負担を軽減することも示されている。
今回の見直しでは開示負担軽減が進む一方、ESRSの中核概念であるダブルマテリアリティは維持された。企業は引き続き、財務影響と社会・環境インパクトの双方から重要性を評価する必要がある。

また、温室効果ガス排出量については、ISSBなど国際基準との整合をはかるため「財務支配アプローチ」と「オペレーショナルコントロールアプローチ」のいずれも利用可能になっている。なお、気候移行計画では、1.5℃整合でない目標を採用する場合、その旨を明確に説明することが求められる。

このほかにも、マイクロプラスチック開示を一次マイクロプラスチックに限定、人権侵害・差別事案については「立証済み事案(substantiated cases)」のみを対象とするなど、実務上の負担軽減を意識した修正も盛り込まれた。

同時に公表された自主基準案では、「バリューチェーン・キャップ」の考え方も導入される。CSRD対象企業が、従業員1,000人以下の取引先企業に対して要求できるサステナビリティ情報量に上限を設けるもので、サプライチェーンへの過度な情報要求を抑制する狙いがある。

改訂版ESRSは2027年度から適用予定で、企業は任意で2026年度から前倒し適用することも可能となる。意見募集後、欧州委員会は2か月程度で委任法を採択する見通しであり、2026年秋ごろには改訂ESRSの正式採択が進むものとみられる。

原文:Commission seeks feedback on revised sustainability reporting standards


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