SASBスタンダード公開草案解説(2026):対象3産業(農業・家禽および乳製品・電気事業者)の改訂ポイント

IFRSでは、SASBスタンダードの見直しが、産業別開示の枠組み全体を再設計するプロジェクトとして段階的に進められている。2025年に優先9セクターの見直しが示されたのに続き、2026年3月に公開された草案では、農業、家禽・乳製品、電力事業者の3産業が新たに対象として追加された。

本稿では、改訂の基本思想を整理したうえで、これら対象産業における主要論点と実務インパクトをコンパクトに解説する。SSBJ基準開示との関連や、指標の追加・修正・削除を一覧で確認できるダウンロード資料も用意している。

SASB改訂の概要

SASBスタンダードの見直しは、以下の大きく3つに整理できる。

  • 産業別開示の再定義:従来のSASBは産業ごとの事業慣行に基づくトピック整理が中心➡「企業価値への影響」という観点で再評価
  • 指標の標準化と比較可能性の向上:従来は産業ごとに指標体系が分散していたが、改訂では水資源や排出、安全といった共通テーマについて定義や算定方法の統一が進める
  • バリューチェーン視点の導入:開示範囲は自社オペレーション中心から、調達・サプライヤー・製品使用段階まで含めた全体へと拡張され、実質的にスコープ3を含む構造へ

つまり、「産業別指標の整備」から「企業価値と結びつく情報構造の再設計」への転換であり、2025年には石炭などを始めとする優先9産業の草案が公表され、2026年には農業を含む3産業の草案が公表された。

※2025年の9産業に関する改定については「ISSB×SASBスタンダード改訂:実務対応の整理とステップガイド」を参照することができる。

農産物、家禽および乳製品、電気事業者及び発電事業者向けSASBスタンダード公開草案

2026年3月に追加的に公開された3産業(農産物、家禽および乳製品、電気事業者及び発電事業者)は、自然資本やエネルギー転換と密接に関わる領域であり、従来の開示では十分に捉えきれなかった構造的リスクを含む点に特徴があると言える。

そのため、本改訂は単なる指標追加ではなく、これらのセクターにおけるリスク認識と開示構造を具体化するものと位置付けることもできるだろう。

以下、セクター別の変更論点および変更一覧(記事後半:ダウンロード資料)を紹介していく。


🔓会員登録して続きを読みましょう!この先では、以下の内容を公開しています:

農産物・家禽および乳製品・電力事業者別の改訂ポイントの詳細解説
・SASB指標の「追加・修正・削除」を一覧で整理した無料ダウンロード資料資料
・SSBJ基準開示との関係を踏まえた実務対応の整理ポイント

無料会員登録(名前・メール・会社名だけ入力)を行うと閲覧可能!!

すでに登録済みの方はログイン



<執筆者

竹内愛子
国際関係学に関する修士号を取得。総合コンサルティングファームにて、システムおよび戦略コンサルティングに従事した後、Big4ファームのアドバイザリー部門にて、ガバナンス・リスクマネジメントや統合報告に関する企業向け支援に携わる。
2022年より ESG Journal にて、サステナビリティ経営の観点から、情報開示実務やそれを支えるシステム活用をテーマに、オリジナル解説およびホワイトペーパーの執筆を行っている。

関連記事一覧