人的資本開示の変更点と実務対 ーSSBJ基準開示との関係

2023年から有価証券報告書において人的資本情報の開示が義務化され、女性管理職比率や男女賃金格差などの指標が公表されるようになった。さらに2026年の人的資本開示に関する制度見直しでは、賃金指標の追加や人材戦略に関する説明の拡充など、開示内容は一段と強化されている。
一方で、日本では女性活躍推進法による情報公表制度も存在し、同様の指標が異なる制度で求められている。本稿では、人的資本開示の制度変化を整理したうえで、SSBJ開示との違いと、女性活躍推進法とのデータ活用の可能性を整理する。
本稿では以下の把握を目的としている。
- 人的資本開示の変更点と開示内容の拡充
- SSBJ基準との関係整理
- 女性活躍推進法との接続と実務上の示唆
人的資本開示の拡充(2023→2026)で何が変わるのか
2022年に公表された「人的資本可視化指針」により、企業が開示すべき人的資本開示する情報として「7分野19項目」が体系的に整理された。この枠組みは、企業の人材に関する情報を網羅的に把握し、投資家との対話に活用することを目的としており、統合報告書やその他報告書において開示されてきている。人的資本は主に以下の7分野で構成されることが望ましいとされている。
| 分野 | 開示内容(例) |
| 人材育成 | 研修、リスキリング |
| エンゲージメント | 従業員満足度 |
| 流動性 | 離職率、採用 |
| ダイバーシティ | 女性管理職比率、賃金格差 |
| 労働慣行 | 労働条件、福利厚生 |
| コンプライアンス | 人権、ハラスメント |
| 健康・安全 | 労働災害、健康管理 |
また、有価証券報告書では、ダイバーシティに関する以下の3指標が必須開示項目として制度化された。
- 女性管理職比率
- 男性育児休業取得率
- 男女間賃金格差
有価証券報告書において開示が必須となっている指標は、女性活躍推進法や育児・介護休業法といった労働関連法制に基づく指標。2023年の人的資本開示は、既存の労働政策に基づく情報を金融開示に取り込んだものと位置付けることができる。
今回、2026年の人的資本開示に関する制度見直しにより、内容はさらに拡充された。今回の改正の特徴は、単に指標を追加するだけでなく、人的資本を企業価値との関係で説明する方向へと開示の性格が変化している点にある。定量情報としては、新たに平均年間給与の対前年増減率が追加された。これは、従来の「状態」を示す指標に加え、企業が人材に対してどのような投資を行っているか、賃上げの動向を可視化するものである。
他にも、定性情報の面でも重要な拡充が行われている。具体的には、従業員報酬の決定方針の開示と、経営戦略と人材戦略の関係についての説明が明確化された点だ。これにより、人材育成など人材戦略との結びつきを示すことが求められるようになった。
2026年3月期以降、人的資本開示は次のように位置づけることができる。
本稿ではこの後に以下について詳しく解説しています!
- 女性活躍推進法との関係と、データ管理の実務的な活用ポイント
- SSBJ基準に基づく開示と人的資本開示の違い(有価証券報告書内での整理)
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<執筆者>

竹内愛子
国際関係学に関する修士号を取得。総合コンサルティングファームにて、システムおよび戦略コンサルティングに従事した後、Big4ファームのアドバイザリー部門にて、ガバナンス・リスクマネジメントや統合報告に関する企業向け支援に携わる。
2022年より ESG Journal にて、サステナビリティ経営の観点から、情報開示実務やそれを支えるシステム活用をテーマに、オリジナル解説およびホワイトペーパーの執筆を行っている。

