ISSB、人的資本開示の調査を継続――投資家ニーズや実務課題を検証

6月10日、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、IFRS財団のデュープロセス監督委員会(DPOC)において、投資家ニーズや実務負担、用語の定義、保証可能性などの論点について調査を進めていることが報告された。現時点で基準開発の決定ははっきりしていないが、人的資本開示を国際基準として扱うべきかどうか、検証が続いている。

人的資本は、ISSBが2024〜2026年のアジェンダで優先的に進めている研究テーマの一つであり、対象には自社従業員だけでなく、バリューチェーン上の労働者も含まれており、人材確保や離職、人材育成、安全衛生、ウェルビーイングなど、企業価値に影響を与える人的資本関連のリスクと機会が検討対象となっている。

検討対象として示されたのは、以下の5つの論点である。

  • 投資家が必要とする人的資本情報の具体的内容
  • 開示作成者が直面する実務上の課題
  • 人的資本に関する用語や定義の整理
  • 国・地域ごとの差異が大きい論点への対応
  • SASB基準や自然関連開示など他プロジェクトとの接続性・整合性

人的資本開示では、離職率や研修時間といった定量指標だけでなく、エンゲージメントや組織文化、人材育成といった定性的要素も重要視される。しかし、各国で雇用制度や労働法制が大きく異なることから、国際基準として比較可能な開示要件を設計することは容易ではない。また、監査・保証の観点からも、どのような定義や測定方法で開示を求めるかが重要な論点となるだろう。

今回のDPOC報告より、投資家ニーズ、企業負担、保証可能性、国際的な比較可能性といった論点への整理が進んでおり、年内までには基準化の可否が決定されるだろう

ISSBにおいて、人的資本は、自然関連開示と並ぶ重要テーマである。すぐに新たな開示義務が生じる状況ではないものの、国内の人的資本開示との整合性や、人材戦略と企業価値の関連性を説明するための情報整備を進めることが、投資家ニーズや制度対応に向けた準備となりそうだ。

原文:Due Process Oversight Committee


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