ILO、労働組合の人権デューディリジェンス事例集公表 日本の実践を紹介

国際労働機関(ILO)は、日本の労働組合による責任ある企業行動と人権デューディリジェンスの取り組みをまとめた事例集「責任ある企業行動と人権デューディリジェンス:労働組合における取り組み事例」を公表した。日本政府(経済産業省)の支援を受ける「アジアにおける責任あるバリューチェーン構築(フェーズ2)」事業の一環として作成されたもので、労働組合が企業の人権尊重やサプライチェーン管理にどう関与し得るかを具体例とともに示している。
報告書は、責任ある企業行動の実効性を高める上で、労働組合が重要な役割を担うと位置付けている。職場の実態を把握する立場として、労働組合は企業の人権・労働リスクの特定や評価、救済メカニズムの整備、社会対話の推進に寄与できると指摘した。ILO多国籍企業宣言や国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」との整合性も強調している。
事例集では、日本最大級の産業別労働組合であるUAゼンセンの取り組みを軸に、イオン、大阪ガス、小松マテーレ、髙島屋、トリドールグループ、ミズノなどの企業別・グループ別労働組合の事例を紹介している。内容は、職場の安全衛生やハラスメント対応、外国人労働者支援、労使協議の仕組みづくり、海外サプライチェーン上の人権課題への対応など多岐にわたる。
報告書によると、近年は企業に対して自社のみならず取引先や海外拠点を含むサプライチェーン全体での人権尊重が求められており、労働組合の役割も従来の社内労働条件改善から、より広範な領域へ広がっている。とくに、国際産業別労働組合組織や産業別労働組合との連携を通じたグローバル枠組み協定(GFA)の活用が、海外の労働問題への対応や情報共有の手段として機能しているとした。
個別事例では、イオンの労働組合がアジア展開に伴い海外現地法人での労働組合結成支援や人権リスク把握に関与していること、大阪ガスの労働組合がグループ会社や取引先労組とのネットワークを活用して対話を広げていること、小松マテーレの労働組合がCSR監査を契機に職場改善を進めていることなどが取り上げられた。髙島屋では独自の「SAY活動」を通じたボトムアップ型の課題解決、トリドールでは外国人労働者を含む多様な従業員の声を反映する仕組み、ミズノではGFAを通じた海外サプライヤーの労働問題への対応が紹介されている。
報告書は、こうした実践の多くが必ずしも当初から「ビジネスと人権」の名の下で行われてきたものではないものの、日常的な労使関係や相談対応そのものが人権デューディリジェンスの基盤になっていると分析している。その上で、既存の労使協議や相談制度を国際基準と結び付けて再整理することで、取り組みの実効性や対外的な説明力を高められるとしている。
一方で、課題としては、企業単位を超えたネットワークの構築や、国内外のサプライチェーン全体を視野に入れた情報共有体制の強化が挙げられた。報告書は、産業別労働組合や国際労働組織がこうした橋渡し役を担う意義は大きいとし、今後の取り組み拡大に期待を示している。
原文:責任ある企業行動と人権デューディリジェンス:労働組合における取り組み事例
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