
6月10日、環境省は国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)第4部に基づく国内実施指針として「公海等における環境影響評価の実施に関するガイドライン」を公表した。国際連合海洋法条約に基づき、日本が公海や深海底で実施する活動において環境影響評価(EIA)を適切かつ円滑に実施することを目的としている。本指針は、対象活動の調査・予測・評価、公表手続き、監視・報告方法などを定め、海洋生物多様性の保全と持続的利用に資するものとなる。
ガイドラインはまず、許可が必要な行為などにEIAの要否を判断する「選別手順」を定義し、関係省庁間の協議プロセスや、事業者が提出すべき活動概要や潜在影響の初期分析などを明記している。また、その分析を公海条約に基づくクリアリングハウス機構に登録し、他国との情報交換や意見提出を促す枠組みも設けられている。
続いて、実際に評価する内容や調査方法を確定する「範囲選定」から、報告書の作成・検証、公表、事後の監視・措置までの一連の手順が明示されている。各段階での資料提出、英語翻訳、公表先、国内外からの意見の扱いなども詳細に規定され、事業者と行政の両方にとって透明性を重視した構造が導入された。
さらに、我が国の排他的経済水域(EEZ)内での活動が公海に影響を及ぼす場合には、その情報を当該沿岸国に通知し、協議を通じて環境保全に配慮した対応を取るよう義務づけている。これは、国際的な信頼強化と適正な対応のための重要な要素として位置付けられる。
本ガイドラインは、2025年6月10日に施行され、公海等の活動評価に関する国内ルール整備の一環として、条約への国内対応を法的・実務的に裏付けるものである。今後は、定期的な見直しによる科学知見や条約発展への対応も進められる予定だ。
(原文)国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)の国内措置としての「公海等における環境影響評価の実施に関するガイドライン」の公表について