
6月13日、欧州委員会は第8次「原子力開発計画(PINC)」を発表し、脱炭素化と競争力確保の目標達成に向け、2050年までのEU域内の原子力投資ニーズを明らかにした。加盟国が策定した原子力計画を実現するには、既存原子炉の運転延長と新設の大型原子炉建設において、総額約2,410億ユーロ(約40兆円)の投資が必要になる見通しだ。さらに、小型モジュール炉(SMR)、先進型モジュール炉(AMR)、マイクロリアクターの開発や、将来的な核融合技術への追加投資も求められると評価している。
同資料によれば、原子力は、産業競争力や供給安全保障、そして気候中立化を支える重要な選択肢となっている加盟国も多い。委員会は、2040年にはEUの電力の90%以上が再生可能エネルギーと原子力を中心とする脱炭素電源から供給されると予測した。EU全体の原子力発電設備容量は、2025年の98GWから2050年には約109GWに増加する見込みだ。すべてのゼロ・低炭素技術を活用し、EUエネルギーシステムの完全脱炭素化を進めることが重要だとしている。
安全性、保安、保障措置、そして放射性廃棄物の責任ある管理と安全な最終処分は、引き続きEUの最優先課題となる。使用済み燃料の最終処分インフラ整備や廃止措置の効率化に向けた取り組みの強化が不可欠と指摘した。さらに、各国規制当局間の協力による許認可手続きの迅速化や、信頼できる国際パートナーとの連携による安定した燃料供給の確保も求められる。
また、既存の熟練人材のスキル向上と新たな人材確保、スタートアップ支援を通じて、革新を後押しする。特に、SMRやAMR、マイクロリアクター、核融合といった先端技術の実用化と市場展開は、欧州における原子力産業の将来を支える柱になると位置付けている。
今後、欧州経済社会委員会(EESC)の意見を受けた後、最終版のPINCが公表される予定で、6月16日にルクセンブルクで開かれるエネルギー理事会で加盟国と議論が行われる。今回の計画は、Euratom条約第40条に基づく義務として、EUの脱炭素化目標やREPowerEU計画、クリーン産業協定の方針と整合を図りつつ策定されたものだ。
(原文)Commission assesses nuclear investment needs by 2050 in view of decarbonisation and competitiveness goals
(日本語参考訳)欧州委員会、脱炭素化と競争力強化の目標を踏まえ、2050年までの原子力投資の必要性を評価