
6月12日、欧州中央銀行(ECB)は、3回目となる気候関連の財務情報を開示した。保有資産の二酸化炭素排出量が減少し続ける一方、今回初めて生物多様性の損失といった「自然関連リスク」への暴露を測る新指標を導入したことを明らかにした。気候変動と自然損失の強いつながりを踏まえ、リスク分析の範囲を広げる。
新指標によると、ユーロシステム(ECBとユーロ圏各国の中央銀行で構成)が金融政策で保有する社債の約30%が、電力・ガス、食品、不動産といった自然への依存度や影響度が特に高い3セクターに集中していることが示された。ECBは、この指標が自然損失の経済・金融への影響を理解する上での重要な一歩だと位置付けている。
ポートフォリオ全体の脱炭素化も着実に進展している。社債などの資産買い入れにおいて、気候変動対策で優れた企業への投資割合を高める「ティルティング」戦略が奏功。2021年末から24年末までの社債ポートフォリオにおける排出量削減のうち、約4分の1がこの戦略によるものだったと分析している。
ECBは今後の目標として、資産購入計画(APP)などで保有する社債ポートフォリオについて、排出集約度を年平均7%削減する中間目標を設定した。パリ協定の目標達成に向けた道筋を維持する狙いがある。
また、ECB自身の年金基金や自己資金勘定でも環境対応を強化。自己資金ポートフォリオにおけるグリーンボンドの比率は前年の20%から28%に上昇し、25年には32%を目指す。
一方で課題も残る。特に製品のバリューチェーン全体に関わる排出量など、一部データの報告に一貫性がなく、企業間の比較が困難だと指摘。正確なリスク管理のため、信頼性が高く統一された報告基準の必要性を強調した。
(原文)ECB adds indicator of nature loss in climate-related financial disclosures as portfolio emissions continue to decline
(日本語参考訳)ECBはポートフォリオの排出量が引き続き減少する中、気候関連の財務情報開示に自然損失の指標を追加