3月21日、 米国証券取引委員会(SEC)は米国の上場企業に対する気候変動開示に関する提案を発表した。本提案により、自社の事業が直面する気候リスクとそのリスクへの対処計画に関する情報、およびScope1、2、場合によってはScope3の温室効果ガス(GHG)排出量を含む企業の気候フットプリントの詳細を示す指標の提供を、米国企業は初めて義務付けられることとなる。
提案された規則に基づく企業の開示要求には、企業の取締役会及び経営陣による気候関連リスクの監督とガバナンス、特定された気候関連リスクが戦略、ビジネスモデル、見通しにどのように影響するか、これらのリスクを特定、評価、管理するために企業が用いたプロセスに関する情報が含まれている。
また、気候関連リスクに対する耐性を評価するためにシナリオ分析を用いている企業に対しては、パラメータ、仮定、分析的選択、シナリオによる財務的影響予測など、使用したシナリオに関する情報を開示することが求められる。また、本規則では、企業が内部炭素価格を使用している場合、その価格と設定方法についての情報も要求される。
新しい規則では、企業はスコープ1、2の排出量、すなわち直接事業からの排出量とエネルギー購入により間接的に生じた排出量、およびスコープ3の排出量を報告することが求められる。大企業は2023年度から、中小企業は2024年度から、スコープ1と2の排出量の報告が義務づけられる予定である。提案では、排出量の開示について保証を求め、大企業は2024年度から、2026年度からは「合理的な保証」ベースで、中小企業はそれぞれ1年遅れで段階的に導入するとしている。
この報告義務の意味は大きく、バリューチェーン全体の排出量を理解し追跡するためのツールやサービスに企業が多大な投資をすることになり、サプライチェーン全体の小規模な組織には自らの影響に対処するようプレッシャーがかかっている。
【参照ページ】
(原文)SEC Proposes Rules to Enhance and Standardize Climate-Related Disclosures for Investors
(日本語訳)SEC、投資家向けの気候関連の開示を強化および標準化するための規則を提案