
4月発行の「コーポレート・ガバナンス白書2025」において、東京証券取引所は上場会社3,831社のガバナンス状況を徹底分析し、実効性ある改革の現状と課題を提示した。
本白書は2007年以降、隔年で発刊しており、2015年の「コーポレートガバナンス・コード」策定から10年を迎える節目として、第10回目の刊行となる。市場の構造改革やインフレ転換、新NISA開始などを背景に、企業価値と資本効率に対する市場・投資家の要求が一層高まる中、東証はプライムおよびスタンダード市場の全上場会社に「資本コストや株価を意識した経営」の実践を要請している。
分析では、ガバナンス改革が形式的対応にとどまる企業が依然多いことが明らかになった一方で、取締役会の構成・独立性の強化、社外取締役のスキルマトリクス導入、サステナビリティ委員会設置や気候変動対応の情報開示など、実質的な取り組みの事例も多数紹介されている。上場企業の約59.2%が3月決算で、時価総額100億円未満の企業は全体の約40%に上る。
注目されるのは、サステナビリティ関連の項目で、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応や人的資本・知的財産への投資状況の開示など、非財務情報の開示強化が進んでいることだ。中でもサステナビリティ委員会の設置率や、ESG評価指標の報酬制度への連動といった動きが増加している。
また、プライム市場の企業を中心に、独立社外取締役の選任やスキル・マトリクスの導入が拡大。東証は、「建設的な株主との対話」の重要性にも触れ、企業が英語での情報開示やIR体制を強化する動きも取り上げている。
本書では、ESG、人的資本、外国人持株比率、親子上場の在り方などの論点に加え、すべての83原則に対する実施状況も付録にて網羅。上場企業自身の立ち位置確認、投資家との対話、実務者の研究資料としても位置づけられる。
(原文)コーポレート・ガバナンス白書