GX-ETS本格稼働へ、経産省がマニュアル公表

経産省、脱炭素化への移行に向け、トランジション・ファイナンスに関する自動車分野におけるロードマップを策定

月31日、経済産業省は、GX-ETS(排出量取引制度)の本格稼働に向けた各種マニュアルを公表した。2026年度から制度が始動するにあたり、制度対象者に求められる手続や実務対応の全体像を整理したものとなる。

GX-ETSは、日本の「成長志向型カーボンプライシング構想」の中核を担う制度であり、一定規模以上の排出事業者に対して排出枠の保有を義務付け、市場メカニズムを通じて排出削減を促す仕組みである。2026年度以降は制度化され、企業にとっては本格的な対応が求められる段階に入る。

今回公表されたマニュアルは、制度対応に必要な実務を体系的に整理したもの。マニュアルは、システム利用にかかる実用的なものから、算定・移行計画とサステナビリティ実務に関連するものまであり、初期対応の指針として位置づけられる。

排出量算定:高品質なデータ管理が前提に

排出量取引制度において、事業者には自らのCO2排出量を「高いレベルで安定した品質」で算定・報告することが求められる。排出量算定・報告マニュアルにおいて、算定対象として示されているのは、国内におけるCO2の直接排出であり、具体的には以下が含まれる。

  • 工場等における燃料使用に伴うエネルギー起源CO2排出
  • 原材料に由来するCO2排出
  • 一定規模以上の輸送能力を有する輸送事業者の燃料使用に伴う排出

一方で、他者から供給された電気・熱の使用に伴う間接排出や、国外排出、サプライチェーンの他者による排出は対象外とされている。排出量算定は、主に以下のプロセスに基づき実施される。

  • 公的書類による敷地境界の特定
  • 排出源および算定対象範囲(バウンダリ)の設定
  • 活動量(燃料消費量等)のモニタリング方法の設計
  • 算定体制(担当者・チェック体制)の構築
  • データ収集および排出量の算定

算定された排出量は、登録確認機関による確認を経た上で、翌年度9月末までに報告する必要がある。排出量データは制度運用の基盤となるため、算定精度と内部管理体制の確保が不可欠となる。

移行計画:戦略と投資の可視化が義務に

「脱炭素成長型投資事業者」として届出を行った場合、移行計画の作成・提出および公表が義務付けられる。移行計画は、組織単位で作成され、原則としてERMS(排出量取引管理システム)を通じて毎年度9月30日までに提出する。第三者確認は不要とされている。

計画には、まず、排出量に関する情報として、前年度のCO2排出量(直接・間接)、2030年度までの排出量目標(直接・間接)が求められる。加えて、脱炭素への移行に向けた具体的な取組として、以下を整理する必要がある。

  • 投資計画(対象設備、実施時期、削減効果)
  • 研究開発の内容および費用
  • 中期経営計画やサステナビリティ情報との関連
    ※前年度からの変更点やその理由も記載対象となる。

提出された移行計画のうち、2030年度の排出量目標や投資・研究開発の内容などは、経産省などのウェブサイトで個社別に公表される。


制度対応の実務フェーズへ

今回のマニュアル公表により、GX-ETSは制度設計段階から実務対応フェーズへと移行した。排出量算定ではデータ精度と管理体制の確立が、移行計画では戦略・投資内容の体系的整理が求められる。いずれも単なる制度対応にとどまらず、企業の脱炭素経営の実行力を問う内容となっていると言える。企業にとっては、排出管理と移行戦略を一体で整備し、継続的に運用していくことが求められるだろう。

原文:経済産業省「排出量取引制度の概要」マニュアル


🔓会員登録で実務解説・実践ガイド

ESG Journalでは、実務に役立つポイントや実践ガイド(テンプレート)を紹介しています!本制度で求められる移行計画や開示内容は、SSBJ基準とも重複する領域が多いため、GX-ETS対応と開示対応を個別に進めるのではなく、一体で整理することが実務上のポイントとなります。詳しくは、以下の解説資料をご参考いただければと思います。

🌍気候変動開示への対応に関連する実務解説はこちら>>>

READ MORE
READ MORE

すでに登録済みの方はログイン

関連記事一覧