5月3日、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)による、セクターを超えたマルチステークホルダーのリーダーおよびその組織のイニシアティブ「不平等に対処するためのビジネス委員会(BCTI)」は、その旗艦レポート「不平等への対処(Tackling inequality)」を公開した。本報告書は、不平等への対応における民間部門の重要な役割について新たな分析を行い、ビジネスが緊急に行動すべき強力な裏付けを示している。
BCTIは、本報告書の中で、今日の世界における不平等の高水準かつ構造的な性質が、我々の社会と経済に存続的な脅威をもたらすシステミック・リスクを表していることを示唆した。BCTIは、不平等がいかに政治・経済システムに対する信頼を損ない、市民の不安や偏向に拍車をかけ、経済成長を制約し、複雑なグローバル課題に取り組む我々の集団能力を損なっているかを明らかにしている。
このような背景から、BCTIは、価値と機会をより公平に分配し、不平等がもたらすリスクを回避するために、あらゆる分野の企業がその潜在能力を確実に発揮できるよう、具体的な行動を特定した。具体的には、ビジネスと人権に関する国連指導原則の実施、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)のある職場とバリューチェーンの実現、未来の働き方に対応できる人材の育成を含む10のアクションで構成されている。
本報告書は、不平等への対処が、企業が一連の複合的な業務リスク、風評リスク、規制リスク、財務リスクを軽減するのに役立つことを強調している。また、不平等是正への行動が、ビジネスの持続的な成功のための重要な投資と見なされるべきであり、大きな市場機会を引き出す可能性を持っていることも強調している。
本報告書は、不平等に対処するための企業行動が、コラボレーションとステークホルダーの関与という2つの柱に基づいて構築されなければならないことも強調した。民間企業が、政策立案者、投資家、NGOなどと緊密に連携し、規模に応じた変革を推進することが極めて重要とした。さらに、民間セクターは、事業活動の影響を受ける可能性のあるステークホルダー・グループと積極的に関わり、その視点を事業の意思決定に反映させなければならない。
【参照ページ】
(原文)More than 60 business and civil society leaders recognize inequality as a systemic risk and lay out a roadmap for private sector action
(日本語訳)WBCSD、不平等是正に向けた企業行動のためのレポートを発表