4月7日、金融庁は、金融機関の脱炭素トランジションに関する調査報告書を公表した。国際的に行われている脱炭素への移行(トランジション)に関する議論の動向を、先進的な企業・金融機関などによる取組み事例と併せて整理することを目的としている。
金融機関においては、2050年までのネット・ゼロ達成にむけて、国際的な議論や顧客企業・地域の特性を踏まえつつ、企業と協働して持続可能性の向上に資する取組みを進めることが期待され、金融機関が果たすべき役割等について議論が活発化している。
国際的な議論の一例として、ネット・ゼロへの移行を目的に銀行、保険、アセットオーナー、運用機関等のイニシアティブの連合体、Glasgow Financial Alliance for Net Zero (GFANZ)が2021年、COP26にあわせて正式に発足した。2022年には①金融機関の移行計画の策定、②セクター別パスウェイ、③ポートフォリオ整合性測定、④多排出資産の計画的なフェーズアウト、⑤実体経済移行計画の移行計画について金融機関の脱炭素・トランジションの取組みに関する提言(5つのレポート)を公表した。
その他、さまざまなイニシアティブにより、ガイドライン、基準等が示され、それぞれの性質に応じた分類等も行われつつあるが、未だ国際的に統一の基準が確立したとは言えない現状がある。
また、脱炭素トランジションに関して、国内外でさまざまな金融機関の取組事例が見られるようになっていることも報告された。例えば、脱炭素の方針、アプローチを設定し、独自に脱炭素に向けた計画的な取組みを行っている事例がある。
しかし、多種多様な企業に対し、セクター、事業規模、地域による差を踏まえた効果的な対話が、十分に行われている段階には至っていない。その背景には、脱炭素にかかる定義、政策・規制、最新技術の不透明さがある。また、脱炭素の取組を評価する基準のあいまいさや、企業側の情報開示の不十分さも課題として残存している状況があり、結
果として、金融機関が企業に対する働きかけに苦慮している状況であることが考えられる。
本報告書の中で、金融機関は、企業の進捗状況のモニタリングに必要な評価軸を確立すること、投資先等企業との信頼関係に基づく脱炭素にかかる対話を進め、取締役会にも積極的に関与することなど、より効果的な助言が求められると述べた。