3月21日、国際的な資産運用会社であるRobecoの新しい調査によると、機関投資家は、気候変動要因をポートフォリオに組み込むことによる政治的・法的影響や、それを怠った場合の影響について心配している。また、生物多様性やエネルギー転換の社会的影響など他のESG課題も、投資要因としてますます重要性を増していると指摘している。
報告書「2023年世界気候調査」のために、Robecoは、欧州・北米・アジア太平洋地域で、保険会社、年金基金、プライベートバンク、ファンド・オブ・ファンズ、顧問会社、証券会社、寄付財団、政府系ファンド、ファミリーオフィスなど、合計27兆ドル(約3,531ドル)以上の運用資産を持つ機関投資家とホールセール投資家300人に調査依頼をした。
本調査では、昨年の政治・マクロ経済の混乱にもかかわらず、気候変動が投資家にとって引き続き重要な焦点となっていることが示され、投資家の71%が気候変動が投資方針の重要な部分を占める、または中心的な役割を果たすと回答した。この結果は、昨年の75%からわずかに減少したものの、投資家は気候変動の重要性が増すと予想しており、85%が今後2年間で「中心的な存在になる、または重要な存在になる」と回答した。
一方で、今回の調査で浮き彫りになった重要な問題の一つは、気候変動要因を投資方針にさらに組み込もうとする投資家が直面する政治的圧力だ。特に、米国では共和党の政治家による反ESG運動が活発化しており、北米の投資家の60%以上が「化石燃料への投資を避けるための投資方針によって、反ESGアプローチをとる特定の管轄区域や場所での事業活動が困難になることを懸念する」と回答している。
同時に、投資家は気候変動政策を取り入れないことによる影響を心配している。欧州の63%、北米の40%、アジア太平洋の57%を含む多くの投資家が、気候変動やその他のESG課題に取り組まない場合の政治的圧力や法的措置に懸念を示している。
双方からの政治的圧力が高まる中、投資家による気候変動関連のコミットメントは増加の一途を辿っている。2023年の調査では、48%の投資家が、2050年までにポートフォリオの排出量をネット・ゼロにすることを公約に掲げている、またはその過程にあると回答し、前年の45%から若干増加した。しかし、コミットメントが増える一方で、ポートフォリオの脱炭素化への取り組みは初期段階にとどまっている。保有株式のスコープ1および2のカーボンフットプリントを算出したと回答した投資家は42%、スコープ3の測定に着手した投資家は20%、脱炭素化と化石燃料使用に関して投資先企業と一方的に積極的に関与したと回答した投資家はわずか18%であった。
また、今回の調査では、気候以外のESG課題も投資家にとって重要度を増していることが判明した。例えば、生物多様性が投資方針の中心である、あるいは重要な要素であると回答した投資家は、2年前はわずか21%だったが、ほぼ半数(48%)に達した。さらに、68%が今後2年間に生物多様性が中心または重要な要素になることが予想されると回答している。また、投資家は、投資データ、調査、格付けの不足(53%)、社内の専門知識の不足(41%)など、脱炭素と生物多様性の行動に関するいくつかの課題を報告している。
同様に、投資家はジャスト・トランジション(低炭素経済への移行が社会的・経済的に公正かつ公平であること)を重視するようになっているようで、このコンセプトが投資方針の中心または重要であると答えた人は48%(2年前はわずか24%)、67%が今後2年間でこのレベルの重要度に達すると予想している。
【参照ページ】
(原文)Robeco’s climate survey shows continued net-zero commitments, biodiversity becoming a major concern, and challenges from energy markets and political pressure
(日本語参考訳)Robecoの気候変動に関する調査では、ネットゼロのコミットメントは継続、生物多様性は大きな関心事に、エネルギー市場や政治的圧力は課題であることが示された