BlackRock CEO、エネルギー転換について「企業に指示を出すのは我々の役目ではない」

BlackRock CEO、エネルギー転換について「企業に指示を出すのは我々の役目ではない」

3月15日、投資大手BlackRockは、同社の会長兼CEOのラリー・フィンクの投資家向け年次書簡を発表した。同書簡では、BlackRockが企業に排出削減を強制している、エネルギー企業を「ボイコット」している等の反ESG政治家の一連の主張について述べられている。

本書簡では、BlackRockは気候変動やエネルギー転換に関する検討を他の長期的なリスクや機会の推進要因と同様に捉えるとしたうえで、フィンクは、「企業に何をすべきかを指示するのは我々の立場ではない」と述べている。

BlackRockは、世界最大の投資運用会社として、気候変動やエネルギー転換に関連する投資テーマについて投資コミュニティで主導的な役割を果たしている。同社は米国の共和党政治家による反ESG運動の中心となっており、社会的アジェンダに従っている、エネルギー企業を「ボイコット」して損害を与えるために活動していると非難されている。

昨年12月、フロリダ州は、BlackRockの運用から20億ドル(約2,637億円)の資産を引き揚げると発表した。テキサス州ではESGを支持する資産運用会社のリストに掲載され、19州の検事総長からエネルギー企業を「ボイコット」していると非難されるなどしている。12月の公聴会では、テキサス州上院州務委員会の共和党議員から同社の代表が質問を受け、ESGの支持は「狭い政治課題の推進」の一環であると主張した。

【関連記事】テキサス州議会議員、ESG投資についてBlackRockとState Streetに質問

本書簡は、インフレ、金利上昇、銀行セクターにおける新たなストレスといったマクロ経済問題に主に焦点を当てたものであり、気候やエネルギー移行関連の問題に大きなスペースを割き、反ESGの主張のいくつかを取り上げている。

BlackRockは、サステナビリティを重視するあまり、「覚醒」アジェンダに従っていると繰り返し非難されているが、フィンクは、「リターンに影響を与えるものを長期的に見る」ことの重要性を指摘し、気候リスクと低炭素経済への移行が投資に重大な影響を与える可能性があり、一部のセクターでは、天候パターンの変化や自然災害の増加に関する保険コストの上昇などの影響をすでに受けていると指摘している。

フィンクは、リスク管理だけでなく、低炭素経済への移行から生じる大きな投資機会から顧客が利益を得られるよう支援することも目的としていると述べた。特に、米国のインフレ抑制法を含む政府のイニシアティブにより、インフラ、炭素回収、クリーンエネルギーなどの市場に大量の資本が流入していることを強調した。

反ESGの主張には、BlackRockが企業に排出削減目標を設定するよう働きかけているという非難も含まれているが、フィンクは、「私がこれまで何年も一貫して言ってきたように、政策を決定し法律を制定するのは政府であって、資産運用会社を含む企業が環境警察となることはない」と述べた。一方で、顧客が重要な持続可能性のリスク要因を追跡し投資機会を特定できるよう、「企業がエネルギー移行をどう進める計画かについて開示を勧め、質問してきた」ことを表明している。

フィンクはまた、BlackRockがエネルギー企業との協業を続けていることを指摘し、エネルギー転換期において「石油とガスが世界のエネルギー需要を満たすために重要な役割を果たす」ことを認め、これらの分野への投資を継続していることを明らかにした。

【参考ページ】
(原文)BlackRock’s Big Problem Responds to Larry Fink’s 2023 Letter
(日本語参考訳)ブラックロックの大問題、ラリー・フィンクの2023年書簡に反論する

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