3月2日、国際エネルギー機関(IEA)が発表した新しい分析によると、2022年の世界のエネルギー関連二酸化炭素排出量は、太陽光、風力、EV、ヒートポンプ、エネルギー効率の成長により、世界的なエネルギー危機の中で石炭と石油の使用量が増加した影響を抑えることができ、当初の懸念よりも少ない1%未満で上昇した。
「CO2 Emissions in 2022」によると、昨年の排出量の増加は、2021年の6%を超える例外的な急増に比べるとはるかに小さかったものの、排出量は依然として持続不可能な成長軌道にあり、クリーンエネルギー移行を加速させ、世界をエネルギーおよび気候目標の達成に向けた道へと進めるため、より強い行動が求められているとしている。本報告書は、IEAの最新分析を一箇所に集め、11月のCOP28気候変動会議に向けた第1回グローバル・ストックテイクを支援するために、自由にアクセスできるようにした新シリーズ「Global Energy Transitions Stocktake」の第1弾となる。
本報告書によると、2022年の世界のエネルギー関連CO2排出量は0.9%、3.21億トン増加し、368億トン以上となり、過去最高を記録したとのことである。排出量の増加は、3.2%の世界経済成長率より大幅に遅く、2021年にCOVID-19危機からの急速かつ排出集約的な経済回復によって中断された10年間のトレンドへの回帰を意味している。干ばつや熱波を含む異常気象や、異常に多くの原子力発電所が停止したことが、排出量増加の一因となった。しかし、クリーンエネルギー技術の導入拡大により、さらに5億5,000万トンの排出を回避することができた。
世界的なエネルギー危機の影響で、アジアではガスから石炭への転換が進み、ヨーロッパではそれほどでもなかったため、石炭によるCO2排出量は1.6%増加した。石炭による排出量の増加は2021年の約4分の1に過ぎないが、それでも過去10年間の平均増加率を大きく上回った。ロシアのウクライナ侵攻後、供給が逼迫し続け、欧州の企業や市民がガス使用量の削減に取り組んだため、石炭からの排出量の増加は、天然ガスからの排出量の1.6%の減少を補って余りある。
石油からのCO2排出量は、石炭からの排出量よりもさらに増加し、2.5%増加したが、パンデミック前のレベルを下回っている。石油からの排出量の前年比増加の約半分は、航空機の利用がパンデミック時の低水準から回復を続けていることから、航空機からの排出量によるものである。
中国の排出量は2022年にほぼ横ばいとなった。これは、厳しいCovid-19対策と建設活動の減少により、経済成長が弱まり、産業および輸送の排出量が減少したためである。欧州連合の排出量は2.5%減少した。これは、記録的な再生可能エネルギーの導入により、石炭の使用量が一部のオブザーバーが予想していたほど多くなかったことによるものである。欧州の冬が暖冬であったことや、ロシアのウクライナ侵攻に対応した省エネ対策も寄与している。米国では、異常気温に対応するために建物のエネルギー消費量が増加したため、排出量は0.8%増加した。中国を除くアジアの新興国および発展途上国の排出量は、経済およびエネルギー需要の急速な伸びを反映して4.2%増加した。
本報告書の世界のCO2排出量は、IEAが最新の公的国家データと一般に公開されているエネルギー、経済、気象データを用いて、地域ごと、燃料ごとに詳細に分析した結果に基づいている。
【参照ページ】
(原文)Global CO2 emissions rose less than initially feared in 2022 as clean energy growth offset much of the impact of greater coal and oil use
(日本語参考訳)IEA、「CO2 Emissions in 2022」を発表