欧州7大アパレル小売業者、調査業務を一本化 人権・環境配慮で共通質問票を導入 

2月、欧州の主要ファッション小売業者7社は、取引先ブランドに対する人権や環境への配慮状況を確認する調査業務を一本化する新たな仕組みを導入した。トレーサビリティ企業TrusTraceと連携し、共通の質問票を用いたデジタルプラットフォーム「One Retail Hub」を構築。企業の事務負担を軽減するとともに、持続可能なサプライチェーンの強化を目指す。

近年、欧州を中心に企業の責任ある調達を求める法規制が相次いでいる。ドイツではサプライチェーン・デューデリジェンス法が2023年に施行され、EUでも企業持続可能性デューデリジェンス指令の導入が進んでいる。フランスやノルウェーなどでも同様の制度が整備されつつあり、企業には人権侵害や環境破壊の防止と是正に向けた体制整備が強く求められている。

これらの法律はいずれも、経済協力開発機構(OECD)のガイドラインを基盤としている。しかし、各小売業者が独自の調査票を作成してきたため、複数の企業と取引するブランドは、内容が似通った質問に何度も回答しなければならなかった。この重複作業は、特に中小ブランドにとって大きな負担となっていた。

こうした状況を改善するため、ZalandoやASOS、ABOUT YOUなど7社の小売業者は、TrusTraceや業界団体と協力し、51問からなる統一質問票「ブランド・デューデリジェンス質問票」を開発した。この質問票はOECD基準に基づき、企業の管理体制、リスク評価、苦情処理制度などを幅広く確認できる内容となっている。ブランドは一度回答すれば、複数の小売業者に同時に提出できる仕組みだ。

導入した企業からは、業務負担が約7割削減されたとの報告もあり、効率化の効果が早くも表れている。

質問票の運用を支えるのが、TrusTraceが提供する無料のデジタル基盤「One Retail Hub」である。企業はオンライン上で質問票に回答しながら進捗状況を確認でき、結果に基づく診断レポートも受け取ることができる。改善が必要な分野については、NGOなど専門機関と連携して支援を受けることも可能だ。

ドイツではすでに法の執行が本格化しており、EUでも新指令の実施が間近に迫っている。規制当局は、単なる書類提出ではなく、継続的な管理体制の構築を企業に求めている。業界関係者は「今後、小売業者との取引を維持するには、統一基準への対応が不可欠になる」と指摘する。

7社が合意した共通基準は、将来的にアパレル業界全体の事実上の標準となる可能性がある。調達情報の共有が進めば、サプライチェーン全体の透明性向上にもつながり、消費者からの信頼確保にも寄与するとみられる。

TrusTraceは「企業が煩雑な事務作業に追われるのではなく、本質的な改善に集中できる環境を整えたい」としている。今回の取り組みは、企業の社会的責任を形式的な対応から実質的な行動へと転換する試みともいえる。

今後、ブランド各社には、規制対応を後追いするのではなく、主体的に体制を整える姿勢が一層求められそうだ。

(原文)Seven Retailers Unify Due Diligence Questionnaires with One Retail Hub
(日本語参考訳)7つの小売業者がデューデリジェンスアンケートを1つの小売ハブに統合

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