環境省、投資家・金融機関向け「ネイチャーファイナンス実践ガイドライン」を策定 投融資判断に自然資本の考慮

9月1日、環境省は、投融資判断に自然資本への考慮を組み込むことを支える「ネイチャーファイナンス実践ガイドライン」を策定したと発表した。併せて、ガイドラインに沿った体制整備などを支援する「令和8年度 ネイチャーファイナンス実践モデル事業」について、投資家・金融機関等の募集を開始した。募集期間は10月1日まで。
ガイドラインは、投資家・金融機関向けの実践的なガイダンスとして、投融資プロセスで自然資本への依存と影響を考慮したポートフォリオ管理を進め、自然資本の保全・回復や持続可能な利用に貢献するネイチャーファイナンスの実践拡大を目的とする。
背景には、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させる「ネイチャーポジティブ」の実現がある。昆明・モントリオール生物多様性枠組では、その達成に向け、2030年までに少なくとも年間2,000億米ドルを自然資本に振り向ける必要があるとしている。
ガイドラインでは、ネイチャーファイナンスが「ネイチャーポジティブ目標に貢献し、その実現を支援するファイナンス」と位置付られ、「ネイチャーポジティブファイナンス」と「ネイチャー主流化ファイナンス」の2つに整理されている。
- ネイチャーポジティブファイナンス:
自然資本に対して測定可能でポジティブな成果を企図するファイナンス。自然への実質的な貢献や成果の測定可能性など3つの要件がある。 例)自然回復に関連する事業への融資や投資 - ネイチャー主流化ファイナンス:
通常の融資における事業性評価や投資判断などにも自然資本の観点を組み込み、自然資本に依存したり影響を与えたりする経済活動を持続可能な慣行へ導く考え方。 例)投融資の判断の際に、事業の与える自然資本への影響を勘案
投資家・金融機関が取り組むべき事項としては、「ガバナンスの構築・組み込み」「企業価値向上に向けたエンゲージメント等の実施」「ネイチャーポジティブな投融資の実行」を提示。投融資方針・戦略への自然関連課題の織り込みや、TNFDに基づく開示、融資判断への自然資本基準の統合などを例示している。
ガイドラインでは、国内外の金融機関による具体的な取り組みが紹介されている。たとえば、王子ホールディングスに対するファイナンスでは、森林の保全・育成に関するKPIを設定し、金融機関がその進捗をモニタリングする仕組みを採用。また、ニッスイに対する取り組みでは、TNFD開示の拡充や持続可能な水産資源の確保に関するKPIの設定・推進を金融機関が支援する事例が示されている。
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今回募集する実践モデル事業では、自然関連リスク・機会の優先対応領域の特定、投融資方針・戦略への自然資本の観点の組み込み、エンゲージメント方針の整備、投融資判断への自然資本基準の統合、情報開示の高度化などに向けた取り組みを想定。採択された投資家・金融機関等に対し、2027年2月26日まで、ガイドラインの解説や方針策定に向けた助言などの支援を行う。
今回のガイドラインは、自然資本への対応が情報開示だけでなく、金融機関の投融資方針や投融資判断にも組み込まれていく方向性を示している。企業側にとっても、TNFDなどに基づく自然関連情報が、投資家・金融機関との対話や資金調達の場面で参照される機会が広がることになるだろう。
こうした動きを踏まえると、自然への依存・インパクトやリスク・機会を把握するだけでなく、その根拠となるデータを継続的に収集・管理できる体制を整えておくことも重要となってくると。
原文:環境省「「ネイチャーファイナンス実践ガイドライン」の策定及び「令和8年度ネイチャーファイナンス実践モデル事業」参加投資家・金融機関等の募集について」
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