SSBJ早期適用は1,382社中2社 制度開示に向け企業に求められる「体制構築」とは

9月2日、三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、SSBJ基準の早期・任意適用状況に関する調査結果を公表した。同調査によれば、2026年2月20日から6月30日までに有価証券報告書を提出したプライム市場上場企業1,382社を調査したところ、SSBJ基準を早期適用した企業は2社にとどまり、任意適用を行った企業は確認されなかったと報告されている。
また、同調査においては、SSBJ基準に準拠した制度開示が始まるなか、企業に求められるのは開示項目への対応だけではない。必要なデータを継続的に収集し、その正確性を確認し、将来の保証にも対応できる社内体制や情報基盤の構築が重要になるとの指摘も示されている。
SSBJ基準への対応にはなぜ時間がかかるのか
SSBJ基準では、企業の見通しに影響を与えることが合理的に見込まれるサステナビリティ関連のリスク・機会について、重要性のある情報を開示することが求められる。同調査においては、例えば次のような準備が必要になることが時間がかかる要因として示されている。
- リスク・機会の特定・評価:自社に関係するサステナビリティ関連のリスク・機会を特定し、財務への影響も含めて検討する
- データ収集・管理体制の構築:必要な情報を複数の部門や拠点から収集し、開示までつなげるプロセスを整える
- 内部統制の整備:収集した情報の正確性を確認し、確認・承認などの責任体制を明確にする
- 保証を見据えた証跡管理:将来の第三者保証を想定し、算定根拠や社内文書などを検証可能な状態で管理する
特に、データ収集・集計プロセスや内部統制の整備に相応の時間とコストを要することなどが、早期適用企業が少数にとどまった要因の一つと分析されている。
SSBJ対応は、開示文章を作成するだけの業務ではない。開示の前提となるリスク管理、データ管理、内部統制、保証対応まで含めた仕組みづくりが必要になると言えるだろう。
「誰が、どのデータを、いつ集めるか」を決める
ここからは、今回の調査結果を踏まえ、SSBJ対応に向けて企業が検討すべき実務上のポイントを整理する。
実務上、特に重要になるのが社内のデータ収集体制であろう。SSBJ基準で必要となる情報をサステナビリティ担当部門だけですべて保有しているとは限らない。必要なデータを洗い出すだけでなく、「誰が保有しているのか」「いつ収集するのか」「誰が確認・承認するのか」「算定根拠や証跡をどこに残すのか」まで設計しておくことが重要になる。
これまでExcelやメールを中心にサステナビリティ情報を管理してきた場合、対象となるデータや関係者が増えるにつれて、最新版の管理や算定根拠の確認、担当者変更時の引き継ぎなどが複雑になる可能性もある。
特に制度開示では、限られた期間で情報を収集・確認し、開示までつなげる必要がある。SSBJ対応を機に、サステナビリティ情報を継続的に収集・管理し、確認・承認の履歴や根拠まで追跡できる仕組みを検討することも重要になる。
SSBJだけのための仕組みにしない
サステナビリティ情報を管理する仕組みを構築する際には、SSBJだけを対象にしない視点も重要だ。たとえば、企業が管理するGHG排出量や各種サステナビリティKPIは、SSBJだけでなく、統合報告書やサステナビリティレポート、CDPなどの外部評価、社内の経営管理など、複数の用途で利用される。
用途ごとに同じ情報を集め直すのではなく、基礎となるデータを一元的に管理し、それぞれの開示や評価に活用できるようにすれば、業務効率化だけでなく、情報の一貫性や確認可能性の向上にもつながる。
SSBJ対応は、新しい制度への対応であると同時に、企業内に分散しているサステナビリティ情報の管理方法そのものを見直す機会ともいえる。
先行事例はまだ多くない 自社で準備を進める必要も
今回の調査で注目されるのは、1,382社を対象とした調査に対し、早期適用が確認された企業が2社にとどまった点ではないだろうか。他社の開示を参考にしてから本格的な対応を始めたいことも想定できるが、SSBJ基準が公表され、制度開示に向けた準備が進むなかでも、現時点では実際の有価証券報告書を参考にできる先行事例はまだ限られている。
また、必要なデータの特定や社内の役割分担、収集・確認プロセス、証跡管理などは、自社の組織や既存の情報管理体制によって異なる場合もあるだろう。
しかし、早期適用企業が少ないからといって、制度対応そのものを先送りできるわけではない。データ収集の仕組みや社内の役割分担、内部統制、保証に向けた証跡管理などは、開示直前に短期間で整備することが難しい。必要な情報を継続的に収集し、根拠を残し、確認・承認した上で開示につなげられる仕組みを構築できるかーー制度開示と保証への対応を見据え、企業には早い段階から情報基盤と社内体制を整備していくことが求められる。
SSBJ対応に向け、データ管理・開示体制をどう整える?
SSBJ対応では、基準とのギャップ分析に加え、社内に分散するデータの収集、証跡管理、確認・承認プロセスなど、継続的な開示を支える仕組みづくりが重要です。
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参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「SSBJ基準の早期・任意適用はどこまで進んだか~適用可能時期から2026年3月期決算までの調査~」
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