マッコーリーAMサーベイ:投資家はESGの焦点をアウトカムにシフト。一方でESGパフォーマンスと報酬の連動に遅れも
マッコーリー・アセット・マネジメントが機関投資家によるESGインテグレーションの状況を調査した結果、大多数の投資家が投資プロセスの中でESG要素を重視していることや、ESGへの配慮がプロセスから結果へと進化し、投資の影響を分析・測定することを求める投資家が増えていることなどが明らかになった。
マッコーリーはこの調査のために、資産運用会社、銀行、コンサルタントや投資アドバイザー、
財団や寄付金、保険会社、年金基金など、運用資産21兆ドル以上に相当する180の実物資産投資家を対象にした。地域別では、アメリカ大陸が22%、EMEAが36%、アジアが31%、オーストラリア・ニュージーランドが11%となっている。
今回の調査では、投資家のESGへの注力度が急激に高まっており、この傾向は今後も続くことが明らかになった。全体の85%が過去2年間で組織のESGへの一般的な注力度が高まったと回答し、89%が今後2年間でさらに注力度が高まると予想している。また投資プロセスにおいては、ESG要素が自社の投資判断に「重要な影響を与える」と回答した投資家が50%に達するなど、2019年の30%未満から大きく上昇した。
実務的には、このような注目度の高まりにより、資産やリソースのESGへのシフトが進んでいる。回答者の59%が、自社にESGの専門部署があると回答し、2年前の47%から増加した。また、82%が、今後2年間で、サステナビリティの手法を取り入れた商品への配分が増えると予想している。
投資家は、投資プロセスの中でESGを考慮する際にいくつかの点を考慮していると回答している。その中で、リスクプロファイルは74%が「非常に重要」または「非常に重要」と回答し、次いで72%が「企業の評判」と回答した。また、投資パフォーマンスもESGを考慮する要因となっており、74%が優れたサステナビリティ戦略はリターンの向上につながると回答し、リターンを犠牲にすると回答したのはわずか3%だった。
本レポートでは、投資によるESGの影響を分析、評価、伝達することへの関心が高まっていることも判明した。回答者の61%は、特定のESGの成果を目標とした投資戦略や運用会社への配分を増やしたと回答し、3分の2近くは、非財務的なESGの成果の分析と開示を増やしたと回答している。
ESGへの関心が高まっているにもかかわらず、今回の調査では、投資家は通常、ESGの成果を報酬に結びつけていないことがわかった。S&P500社の半数以上がそうしているという調査結果に対し、ESGの成果に報酬を連動させていると答えたのは回答者のわずか14%であった。一方回答者の35%は、報酬をESGパフォーマンスに連動させるべきだと考えている。
トピック別に見ると、ESGで考慮すべき事項のトップは明らかに「気候」で、55%が「気候変動」を挙げており、「議論の余地のあるセクターの除外」の18%を大きく上回り、「ダイバーシティ&インクルージョン」を選択したマネジャーはわずか5%であった。
気候変動については、35%の投資家が、自分たちの組織が2050年のネット・ゼロ目標に向けてポートフォリオを調整することを約束していると回答し、さらに46%が、今後2年間に絶対、あるいは部分的にそうするつもりだと答えた。ポートフォリオのGHG排出量の全部または一部を把握している投資家は半数に満たず、さらに24%が将来的に排出量を把握する予定であり。44%がポートフォリオ企業に何らかの形で気候変動リスクの情報開示を求めていると回答した。
【参照ページ】
(原文)Macquarie Asset Management 2021 ESG Survey
(日本語訳)マッコーリーAMサーベイ:投資家はESGの焦点をアウトカムにシフト。一方でESGパフォーマンスと報酬の連動に遅れも