SBTi、自動車業界向けネットゼロ基準案を公開 8月まで意見公募

6月12日、SBTi(科学的根拠に基づく目標設定イニシアチブ)は、自動車業界向けの新基準について、草案を発表し、60日間の意見公募を開始した。自動車業界は世界の人為的温室効果ガス排出量の20%以上を占めており、サプライチェーンの混乱や投資家からの監視強化など気候リスクにも直面している。今回の基準案は、そうした背景を受けた包括的な枠組みである。

本草案は、現在策定中の「Corporate Net-Zero Standard Version 2(企業向けネットゼロ基準第2版)」と整合性を保ちながら設計されており、企業にとって信頼性のあるネットゼロ実現の道筋を明確に示すものとなっている。2024年3月に公表された「Land Transport Guidance」を基盤とし、Scope 1、2、3の全領域にわたる排出削減基準を網羅している。

意見公募では、以下6つの分野に関する意見を特に求めている:

  • 「企業向けネットゼロ基準第2版」との整合性と基準の適用方法
  • 新車製造業者向けのScope 1~3排出量を統合した新たな指標の導入
  • Zero Emissions Vehicles Declaration(ゼロエミッション車両宣言)の代替としての「低排出車販売比率」向上義務
  • 経済・市場状況に応じた地域別排出経路
  • 部品メーカーに対する原材料調達・製造時の排出削減基準
  • より詳細なwell-to-wheel(燃料の採掘から使用まで)排出算定手法とデフォルトデータの提供

基準案の対象は、年間1万台以上の車両を製造する自動車メーカーおよび、自動車部品売上比率が20%以上の部品メーカーに限定される。これ以下の企業は、より広範な「企業向けネットゼロ基準第2版」の適用も選択可能である。

意見募集は2025年8月11日まで実施され、企業、政策担当者、投資家、学術関係者、市民社会などあらゆる関係者に参加が呼びかけられている。SBTiは、この草案を実現可能かつ実務的でありながらも、野心的で科学的根拠に基づく内容へと仕上げていく方針である。

(原文)SBTi Opens Consultation on New Standard to Accelerate Automotive Industry’s Net-Zero Transition
(日本語参考訳)SBTi、自動車業界のネットゼロ移行を加速させる新基準に関する協議を開始

関連記事

おすすめ記事

  1. ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    2024-5-15

    ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    上場企業であれば気候変動の情報開示が当たり前になってきたのと同じく、人材のウェルビーイングの実現に…
  2. CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
  3. ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    2024-4-30

    ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    ESG投資の流れは国内外において拡大を続けている分野であり、注目を集めている。投資家のニーズに応え…

ピックアップ記事

  1. 2025-6-25

    IFRS財団、ISSB基準の実務導入を支援する新eラーニングモジュールを公開

    6月13日、IFRS財団は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が策定した基準の理解と導入を…
  2. 2025-6-25

    バーゼル委員会、銀行の気候リスク開示・自主的枠組みを公表

    6月13日、世界の主要な銀行規制当局で構成されるバーゼル銀行監督委員会は、銀行が抱える気候関連の金…
  3. ESRS改訂の概要と実務的影響:簡素化のポイントと日本企業の対応

    2025-6-20

    ESRS改訂の概要と実務的影響:簡素化のポイントと日本企業の対応

    2025年6月19日、EFRAG(欧州財務報告諮問グループ)が欧州サステナビリティ報告基準(Eur…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る