
6月11日、米環境保護庁(EPA)のリー・ゼルディン長官は、上・下院議員らと共に、米国の発電所を対象としたバイデン=ハリス政権下の温室効果ガス(GHG)排出規制と2024年水銀・有害大気汚染物質基準(MATS)の改正を撤廃する方針を発表した。これが実現すれば、発電部門の規制コストを今後20年間で190億ドル、年間換算で12億ドル以上削減できる見込みだ。
ゼルディン長官は「安価で信頼性の高い電力はアメリカン・ドリームの基盤であり、国家のエネルギー支配力を裏付けるものだ」と述べ、バイデン政権の規制を「特定産業の排除を狙った、狭量な気候変動政策の産物」と強く批判した。今回の提案では、オバマ政権下の2015年排出基準とバイデン政権下の2024年の新規・既設の化石燃料発電所向け排出規制を全面撤廃し、化石燃料による発電を支える構造を取り戻すことを目指す。
また、最高裁が2022年に初代クリーン・パワー・プランを違法とした判決を踏まえ、EPAは化石燃料発電所からのGHG排出が大気汚染防止法(CAA)の下で危険な汚染に大きく寄与しているとは言えないと提案理由を説明した。加えて、二酸化炭素回収・貯留技術の適用義務化など、特に新設ガスタービンや石炭火力に対する厳格な技術要件の撤廃も検討している。
同時に、2024年に改正されたMATS規制の一部撤廃も盛り込まれた。これにより、フロリダ州やイリノイ州、テキサス州など多くの州の石炭火力発電所の経営に生じていた不確実性を解消し、2012年基準に戻す方針である。既に業界は水銀排出を90%削減するなど大幅な改善を達成しており、さらなる強化は過剰だと主張する。
(原文)EPA Proposes Repeal of Biden-Harris EPA Regulations for Power Plants, Which, If Finalized, Would Save Americans More than a Billion Dollars a Year
(日本語参考訳)EPA、バイデン・ハリス政権下の発電所に対する規制の撤廃を提案―年間10億ドル以上の節約