
4月24日、フランス政府は欧州最大級の気候イノベーションイベント「ChangeNOW」にて、国際的なカーボンクレジット市場の透明性と健全性向上を目的とした「高品質カーボンクレジット活用のためのチャーター(憲章)」を発表した。エコロジー移行・生物多様性・海洋・森林大臣であるアニエス・パニエ=ルナシェ氏が壇上で紹介し、シュナイダーエレクトリックを含む17の主要グローバル企業が同日、公式署名した。
このチャーターは、カーボンクレジットが確実かつ環境的実効性を伴って活用されることを狙いとするもので、昨年アゼルバイジャンで開催されたCOP29会議の流れを受けて策定。カーボンクレジットを通じた途上国での排出削減・CO₂吸収の取り組みを後押しし、国際協力を強化する枠組みだ。
チャーターが策定する主な原則は、プロジェクトの追加性、恒久性、リーケージ防止、二重計上防止、独立した第三者認証の厳格な遵守である。これにより、ハイインテグリティ(高い信頼性)のカーボンクレジットが市場で用いられ、環境価値の裏付けが明確になると共に、企業の脱炭素経営がより強固なものとなる。
実際の現場では、インドで進められているEcoAct社(シュナイダーエレクトリック傘下)のマングローブ植林プロジェクトのように、炭素吸収・自然災害対策・持続可能な雇用・女性活躍など、多面的な社会価値を生み出す事例も増えている。
現在、世界全体で気候ファイナンスの資金ギャップが深刻化している。国連などの推計によれば、開発途上国だけで2030年までに年間約1兆ドルが必要とされるが、国際的なコミットメントは3,000億ドル程度にとどまっているという。この不足分を埋めるためにも、民間企業による自主的カーボンオフセット市場(VCM)の活用、そして高品質プロジェクトへの資金誘導が期待される。
カーボンクレジット市場では、「排出回避・削減型」と「吸収・除去型」の両クレジットが必要とされており、それぞれ再生可能エネルギー導入や森の保護、植林やバイオチャー、CO₂回収技術など、多様な対策を組み合わせた“ポートフォリオ・アプローチ”が今後の世界的潮流とされる。
シュナイダーエレクトリックは今回のチャーター署名により、「自社とバリューチェーンの温室効果ガス削減を最優先しつつ、カーボンクレジットはあくまで科学的な削減努力の補完手段とする」「高品質なカーボンプロジェクトの選定」「国際規格との整合」に引き続き取り組む方針を表明した。
同社担当者は、「気候変動への対応には企業、市民社会、行政、現場の連携が不可欠。新チャーターを通じて、より強固な信頼と透明性を市場にもたらし、持続可能な未来に向けた行動を加速させたい」と述べた。
気候テック業界では、今回の発表を受けて今後さらに国際基準や各国規制に沿った高品質カーボンクレジットの需要が拡大する見通しだ。
(原文)High-Integrity Carbon Credits: New Charter Launched by French Government
(日本語参考訳)高信頼性炭素クレジット: フランス政府が新憲章を発表