国際海洋法裁判所、気候変動・生物多様性保全に関する勧告的意見を発表

5月21日、国際海洋法裁判所(ITLOS)は、「気候変動と国際法に関する小島嶼国委員会(COSIS)」から提出された気候変動に関する要請に対し、勧告的意見を発表。勧告的意見はITLOSとしての国際法の公式解釈を示し、今後の判決や各国の政策に影響を与える重要な文書である。

COSISは、国際海洋法上の加盟国の義務として「温室効果ガス排出量の削減や海洋温暖化」「海面上昇」「海洋酸性化の防止」を要請していたが、ITLOSは全会一致で、今回の要請内容について自らが管轄権を持つと判断した。さらに、大気中への人為的な温室効果ガス排出はUNCLOS上の「海洋環境汚染」に該当するとの公式見解もしめした。そして、温室効果ガスの排出による海洋汚染を防止、削減、抑制するために必要なあらゆる措置を講じ、関連政策の調和に努める義務を負うことも明言した。

ITLOSは、加盟国に対し、気候変動の影響や海洋酸性化から海洋環境を保護・保全する具体的な義務も負うべきだと勧告。また、希少な生態系や脆弱な生態系、海洋生物の生息地を保護・保全することなど、生物多様性保護の取り組みについても義務とした。

本勧告的意見は、海洋の生物多様性保全の国際的案枠組みとして重視されるだろう。

なお、COSISは、パラオ、ツバル、ニウエ、バヌアツ、セントルシア、セントビンセント及びグレナディーン諸島、セントクリストファー・ネイビス、アンティグア・バーブーダの8カ国で構成されている。

【参照ページ】
(原文)TRIBUNAL DELIVERS UNANIMOUS ADVISORY OPINION IN CASE NO. 31

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