5月10日、バイデン政権は、国のCO2排出量の主な原因の一つである電力部門からの温室効果ガス(GHG)排出を大幅に削減することを目的とした一連の提案を発表した。
米国環境保護庁(EPA)によると、石炭火力発電所と天然ガス火力発電所の新基準を含むこの提案は、2042年までに6億メートルトン以上のCO2汚染を削減し、米国の自動車のおよそ半分が道路から離れることに相当し、気候および健康に850億ドルの利益をもたらすとされている。
また、EPAは、この規則が電力料金に与える影響は「ごくわずか」であり、企業や電力会社が投資や計画を決定するのに十分なリードタイムを提供するものであるとしている。
この提案は、バイデン政権が設定した米国の気候変動目標の達成に大きく貢献するもので、2050年までにネット・ゼロエミッション経済を達成することを約束し、2030年には経済全体の排出量を50~52%削減するという暫定目標を掲げている。また、同政権は2035年までに炭素汚染のない電力部門を実現するという目標も掲げている。電力部門は、米国のGHG排出量の約25%を占めている。
今回の提案では、2030年から化石燃料を燃料とする発電所において、より多くのCO2排出規制を実施することが求められ、時間の経過とともに要件は厳しくなっていく。提案には、炭素回収・貯蔵(CCS)を含む技術の使用、天然ガス発電所での低GHG水素混焼の使用、既存の石炭発電所での天然ガス混焼が含まれる。
本規則は、米国の気候変動目標の達成に大きく貢献すると思われるが、政治的な反発や法的な挑戦に直面する可能性が高いと見る。例えば、最高裁は2022年、オバマ政権が2015年に策定したクリーンパワープランに対する異議申し立てで、EPAには石炭工場からの炭素排出量の制限を規制する権限がないとの判決を下した。
【参照ページ】
(原文)FACT SHEET: Biden-Harris Administration Outlines Priorities for Building America’s Energy Infrastructure Faster, Safer, and Cleaner
(日本語参考訳)ファクトシート:バイデン-ハリス政権、米国のエネルギーインフラをより速く、より安全で、よりクリーンなものにするための優先事項を発表