3月9日、カンザス州の予算部門が発表した分析によると、同州の年金基金におけるESG投資の禁止と、同州のサプライヤーがサステナビリティに焦点を当てた要素を業務に取り入れることを阻止することを目的とした新しい法律案は、年金システムのリターンに36億ドル(約4,900億円)の損失を与える可能性があることが判明した。
「カンザス州年金・企業イデオロギー干渉防止法」は、州および連邦レベルの共和党政治家による一連の反ESGイニシアチブの一部を形成している。
カンザス州司法長官Kris Kobachが最近の論説で「全米で最も強力な反ESG法案」と表現した本法案は、州内の投資・金融・ビジネスにおけるESG要素の使用を大幅に阻止することを目的としている。「イデオロギー的ボイコット」と呼ばれるものに取り組む企業をターゲットとし、温室効果ガスの排出量を開示しない、あるいは排出量削減などの環境基準を満たしていない企業との取引を制限するなど、幅広い要素が含まれる可能性があった。
本法案は、カンザス州公務員退職年金制度(KPERS)に対し、「イデオロギー的ボイコット」に従事している企業の保有株式の売却を要求する。また、活動に従事する金融機関のリストを公表し、リストに掲載された銀行は州預金の受け取りが禁止され、州の契約業者はボイコットに従事していないことを書面で証明しなければならない。
また、本規則は州年金制度以外にも適用され、登録投資顧問はESG主導のファンドに投資する前に顧客から書面による同意を得ることを義務付けられる。
しかし、予算委員会の報告書で明らかになったコストを考慮すると、本法案をこのまま進めることは困難な可能性がある。本報告書によると、KPERSは、本規則案の結果、投資ポートフォリオが再編されると予測している。「現在の投資マネージャーが受託者としての資格を失い、代替投資マネージャーに置き換わるため」であり、再編によってリターンが0.85%減少すると付け加えた。
カンザス州の報告書は、反ESG政治運動が直面する最近の一連の難題に続くものである。先月ワイオミング州議会で2つの反ESG議案に反対票を投じたほか、ノースダコタ州では「エネルギー企業の不買運動を行う」金融機関を対象とする法案が90対3で反対された。インディアナ州は、公的年金制度にESG要素を考慮したファンドからのダイベストを義務付ける規則は10年間で約70億ドル(約9,500億円)の収益損失をもたらすとの分析結果を発表している。
【参照ページ】
(原文)Kansas anti-ESG bill could cut pension returns $3.6 bln -analysis
(日本語参考訳)カンザス州、反ESG法案が年金基金の大きな負担になると分析