WBCSD、水素製造の全ライフサイクル排出量削減のための新ガイドを発表

 

2月9日、持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)は、水素投資を行う企業やそのビジネスパートナーに対し、投資の意思決定プロセスに「1.5℃基準との整合性」を追加することを求める新しいガイドを発表した。本ガイドは、WBCSDのメンバー企業のうち18社が参加した共同作業の成果である。

本ガイドは、水素経済が2050年までに排出量ゼロを達成し、化石燃料への依存度がますます低くなるエネルギーシステムへの移行を支援するために必要な技術、政策、インセンティブ、ビジネスプランなどのインフラの設計を支援することを目的としている。

本ガイドでは、水素プロジェクトがパリ協定1.5°Cの気候目標に合致していることを確認するために、企業が投資判断に用いることのできる3つの基準の概要を示している。

  • 国際エネルギー機関(IEA)のネット・ゼロエミッションシナリオ曲線に沿った脱炭素化率(水素に関連するライフサイクル排出量)、2050年にライフサイクル炭素排出量がネット・ゼロに到達すること。
  • 代替エネルギーがない、または使用に適さない、あるいは効率が悪いセクターの脱炭素化のために水素を利用する。
  • 天然(化石)ガスベースの水素については、2つのレッドラインを尊重すること。

これらの基準を実践するために、WBCSDは企業に対して以下の行動をとることを推奨している。

  • 2050年に炭素排出がネット・ゼロになるように、水素への投資のライフサイクル全体の炭素強度をどのように削減できるかをマップし、プロジェクトのライフサイクルを通してそれらの炭素強度削減策に投資することを計画する。
  • 1.5℃シナリオに対応するために必要な世界的な脱炭素化に合わせて、既存の灰色水素ユニットを脱炭素化する。
  • 可能な限り低い炭素強度を出発点として、新たな水素製造を展開する。
  • IEAとWBCSDの青水素に関するレッドラインを尊重する。
  • 温室効果ガス(GHG)排出削減のための投資を行い、2050年にその投資が炭素排出をネット・ゼロにすることを確実にすること。

水素分野に関わる全ての企業、投資家、政策立案者は、本ガイドに示された炭素強度削減パスウェイの例を参照し、1.5℃シナリオに沿った最適な投資方法を決定することができる。

【参照ページ】
(原文)How to align hydrogen investments with a 1.5°C pathway
(日本語参考訳)WBCSD、水素製造の全ライフサイクル排出量削減のための新ガイドを発表

関連記事

おすすめ記事

  1. TCFD×TNFD統合開示ガイド:いま企業が備えるべき実務対応とは?

    2025-8-20

    TCFD×TNFD統合開示ガイド:いま企業が備えるべき実務対応とは?(再掲)

    ※2025年5月28日公開済みの記事を一部更新し再掲している。 企業のサステナビリティ関連の…
  2. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成している。今後の動向により内容は随時更新される…
  3. TCFD・IFRS・CSRDの移行計画とは:業界別に考える開示ポイント

    2025-7-10

    TCFD・IFRS・CSRDの移行計画とは:業界別に考える開示ポイント

    ※本記事は2024年10月の内容にGX-ETSに関する内容を追記し再掲載している。(2025年7月…

ピックアップ記事

  1. サステナビリティ開示におけるタクソノミ導入と実務対応のポイント

    2025-8-22

    サステナビリティ開示におけるタクソノミ導入と実務対応のポイント

    2025年8月8日、金融庁は、「2027年版EDINETタクソノミの開発案」を公表した。これは、I…
  2. 2025-8-19

    PR【対談&ワークショップ】第一生命が語る「ESG開示」と「企業価値向上」

    毎回満員御礼でご好評をいただいているESG Journal 会員向けのESG Journal …
  3. 2025-8-18

    金融庁、EDINET新タクソノミ案公表 27年版ではサステナ情報開示も検討

    8月8日、金融庁は企業の有価証券報告書などで利用される電子開示システム「EDINET」の基盤となる…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る