米最高裁、環境保護庁に石炭工場からの炭素排出量を規制する権限を認めず

最高裁の判決は、米国の気候戦略に大きな後退をもたらした

6月30日、米国連邦最高裁判所は環境保護庁(EPA)には石炭工場からの炭素排出量の制限を規制する権限はないとする判決を下した。同判決は、米国政府が気候変動に関する政策を推進する能力に大きな影響を与える可能性がある。

バイデン大統領は判決発表後の声明で、この判決を “我が国を後戻りさせることを目的とした、もうひとつの壊滅的な判決 “と呼んだ。

2015年、オバマ政権下でEPAは、大気汚染問題に対処するための行動を認めた大気浄化法の権限を用いて、石炭および天然ガス発電所からのCO2排出量の上限を規制する「クリーンパワープラン」を実施した。この動きは、石炭から天然ガスや再生可能エネルギーなどのクリーンな電源への転換を促進するためのものだった。最高裁判例は、米国最大の石炭生産地の一つであるウェストバージニア州が、EPAのイニシアチブに対して異議を唱えたことに基づくものである。

今回の判決で、裁判所は、EPAは高排出ガスから低排出のエネルギー源への転換を促進するための排出量規制を考案する権限を与えられておらず、また連邦機関にはそのような “経済的・政治的意義 “を持つ規制を実施する権限がないとした。

バイデン大統領は、気候変動対策を政権重点施策の中心に据えている。就任初日に米国をパリ協定に復帰させたのを皮切りに、大幅な排出量削減目標を国家に約束し、主要排出経済部門をよりクリーンな代替エネルギーに移行させる数々の取り組みや、環境影響やリスクに関する企業の透明性を向上させるための取り組みを行っている。

国の気候目標に合わせて産業やセクターを移行させるために必要な行動が経済的に大きな影響を及ぼすことを考えると、今回の判決は、連邦政府機関を通じて政府の多くのイニシアティブを実行する能力を危険にさらすものだ。

バイデン大統領は声明の中で、本決定を見直し、連邦法の下で “気候変動の原因となる汚染を含む有害な汚染からアメリカ人を守り続ける “方法を見つけるために、連邦機関との協力を約束した。

【参照ページ】
(原文)SUPREME COURT OF THE UNITED STATES

関連記事

“セミナーへのリンク"

おすすめ記事

  1. ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    2024-5-15

    ウェルビーイングとは?5つの要素から企業に求められる対応を解説

    上場企業であれば気候変動の情報開示が当たり前になってきたのと同じく、人材のウェルビーイングの実現に…
  2. CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
  3. ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    2024-4-30

    ESG投資とは。改めて考える重要性とESG経営のメリット・今後の課題

    ESG投資の流れは国内外において拡大を続けている分野であり、注目を集めている。投資家のニーズに応え…

ピックアップ記事

  1. 2024-11-29

    ISO、ESG分野の国際ガイダンス「ISO ESG Implementation Principles」を発表

    11月14日、ISO(国際標準化機構)はCOP29で、ESG分野における複雑な課題への対応を支援す…
  2. COP29で何が決まった?カーボンクレジットや途上国支援の基金についてポイント解説

    2024-11-28

    COP29で何が決まった?カーボンクレジットや途上国支援の基金についてポイント解説

    気候変動への対応は、企業にとって避けられない課題である。特にカーボンクレジット市場や途上国支援に関…
  3. 2024-11-25

    <発表>お役立ち資料ダウンロードランキング2024

    いつもESG Journal Japanをご覧いただきましてありがとうございます。今年までに最もダ…

““登録03へのリンク"

ページ上部へ戻る