ESMA、EUの炭素市場の透明性向上に向けた勧告を実施

3月28日、EUの市場規制機関である欧州証券市場庁(ESMA)はEUの炭素市場の機能を検証・対処する、排出枠および関連デリバティブの最終報告を発表した。欧州委員会の要請により作成されたこの報告書は、排出枠(EUA)および排出枠デリバティブの取引について詳細に分析し、市場の透明性と監視を改善するための規制当局からの勧告を盛り込んでいる。

欧州排出権取引制度(ETS)は、EUの気候変動対策の主要な政策手段の一つであり、炭素排出量に価格をつけるものである。この制度はキャップ・アンド・トレード方式で、企業が毎年排出できる温室効果ガス(GHG)の量を制限する上限を設定し、毎年一定数の炭素排出枠を発行する。企業は排出量を賄い、キャップを確実に下回るだけの排出枠を保有し、必要に応じて互いに排出枠の取引可能化が義務付けられている。

ESMAの報告書では、EUの炭素市場の機能に関する現在の大きな欠陥は見つからなかったが、規制当局は透明性と監視の向上を目的としたいくつかの勧告を行ったと述べられている。提言には、排出枠のデリバティブ取引を行う取引所へのポジション管理規制の拡大、ポジション報告の適応、排出枠先物のオープンポジションに関する週報の発行、ESMAへのプライマリー市場取引へのアクセス提供などを含んでいる。

また、同報告書は、欧州委員会の検討のために2つの可能な行動方針を検討しているが、この問題についての最終的な見解は示していない。その中には、市場の乱用を防ぎ、秩序ある価格設定と決済を支援するために、炭素デリバティブにポジション制限を導入することや、EUの炭素市場に関するデータが断片的であることから生じる課題に対処するために、EUの炭素市場の集中的な市場監視を設定することが含まれている。

【参照ページ】
(原文)ESMA PUBLISHES ITS FINAL REPORT ON THE EU CARBON MARKET
(日本語訳)ESMA、EU炭素市場に関する最終報告書を発行

関連記事

“導入事例へのリンク"

おすすめ記事

  1. 2024-4-16

    SSBJ公開草案の重要ポイント解説:今後の気候変動の情報開示はどう動くか

    2024年3月29日、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が国内のサステナビリティ開示基準の草案…
  2. 2024-4-9

    SBTN(Science-Based Targets for Nature)とは。企業のネイチャーポジティブ経営を実現する目標設定の方法論を解説。

    TNFDのフレームワークが公開され、先進企業ではフレームワークに基づく情報開示が進みつつある(20…
  3. 2024-4-2

    【さくっと読める】TNFDの開示とは。重要ポイントを抽出。

    2023年9月、TNFDのフレームワークが完成し公開された。2023年時点でTNFDに基づく開示を…

ピックアップ記事

  1. 2024-5-8

    IBM、ESGデータプラットフォームにCSRD対応機能を追加

    4月30日、IBMは、ESGデータの収集、分析、報告プ​​ラットフォーム「IBM Envizi」の…
  2. 2024-5-8

    IFRS、EFRAG、ISSB/CSRD報告基準に双方に対応する企業向けガイダンスを発行

    5月2日、IFRS財団と欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)は、ESRS-ISSB基準の相互に共…
  3. 2024-5-7

    CSRDとは。日本企業に与える影響と今すぐできる対応を紹介。

    CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive…
ページ上部へ戻る