ニュージーランド航空、2030年までに排出量を20~25%削減へ―SAF導入と運航効率化に期待

5月1日、ニュージーランド航空は2030年までに温室効果ガスの「ウェル・トゥ・ウェイク(Well-to-Wake)」排出量を2019年比で20〜25%削減する見通しを発表した。本削減目標は、燃料の生産から輸送、燃焼までを含む全過程での排出量に基づくもので、2024年度には同社の総排出量4.3百万トンのうち92%を占めた。削減目標は排出強度ベースではなく、正味排出量ベースで設定されており、2050年のネットゼロ達成という長期目標との整合性が取られている。

本2030年ガイダンスでは、SAF(持続可能な航空燃料)の導入拡大に大きく期待している。同社は2030年までに燃料使用量の10%をSAFに切り替える計画であり、これは世界経済フォーラムの「Clean Skies for Tomorrow」イニシアティブにも合致する。実現には、SAFの世界的供給拡大、価格の適正化、技術・認証・政策面での支援が不可欠である。

さらに、燃費効率の高い新型機材の導入と、航空ネットワークの最適化、さらには空港や航空技術供給企業との協力による運航効率化も前提としている。また、国際航空の排出量増加に対するオフセット制度であるCORSIAの義務とこれに加えて約1.1万トンの高品質なボランタリー・カーボンクレジットも用いる計画だ。これにはニュージーランド国内での自然ベースの除去手法や、世界各地でのエンジニアド・リムーバル(技術的除去)の支援も含まれる。

ニュージーランド航空は、今後の脱炭素戦略を毎年見直し、排出ガイダンスを更新する予定で、次回は2025年8月に気候報告書で発表される見込みである。同社は、SAF、効率化、オフセットの3本柱で、2050年ネットゼロを目指す。

(原文)Air New Zealand, 2030 Emissions Guidance

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