EU理事会、ESGレーティング・プロバイダー規制案で合意

EU理事会、ESGレーティング・プロバイダー規制案で合意

12月20日、欧州理事会は、ESGレーティング・プロバイダーを規制する案について合意に達したと発表した。ESGレーティング・プロバイダーは欧州市場規制当局であるESMAの認可下に置かれ、プロバイダーが使用する手法やモデルの透明性を高め、利益相反リスクに対処するための新たなルールが盛り込まれる。

近年、投資家がESGを考慮した投資プロセスをますます取り入れるようになっているため、ESG格付けセクターの規制を求める声が高まっているが、プロバイダーの活動や事業は一般的に市場や証券規制当局の対象外となっている。

2021年初頭、ESMAは欧州委員会の金融サービス調整官Mairead McGuinnessに書簡を発行し、ESG格付けセクターの現在の非規制状態とその結果としての透明性の欠如が投資家に潜在的なリスクをもたらすと助言した。2021年7月、欧州委員会は新たな「持続可能な金融戦略」を発表し、その中でESG格付けの信頼性、比較可能性、透明性を向上させるための措置を講じることを約束し、その後ESMAに市場参加者の調査を開始するよう要請した。

2023年6月、EU委員会は、ESG格付けプロバイダーがESMAによって監督され、品質と信頼性を確保するための提案を発表した。本提案には、厳密で客観的な手法の使用、利益相反の防止、手法、モデル、主要な格付けの前提条件に関する透明性の向上などの要件が含まれている。

この合意は、欧州委員会の提案に関するEU議会との交渉の基礎となる。

欧州委員会の提案では、EU域内で活動するESG格付けプロバイダーはESMAの認可を受ける必要があるが、EU域外に設立されたESG格付けプロバイダーは、同等性決定、ESG格付けの承認、または承認を必要とする。

欧州委員会の提案では、コンサルティングや信用格付けなどの業務とESG格付けの業務を分離し、格付けプロバイダーがこれらの業務を提供することは認められていなかった。一方で、理事会の見解では、プロバイダーがこれらの業務を明確に区別し、利益相反を回避するための措置を講じる限り、これらの業務について別法人を設立する必要はないとしている。

また、小規模のESG格付プロバイダーに対しては、3年間の一時的なオプション制度を設け、規制当局への監督手数料の支払いは不要とし、コンプライアンス要件も緩和する。3年間の期間終了後、小規模なプロバイダーは、監督手数料を含む規制の全条項を遵守する必要がある。

新規制に関するEU議会と理事会の交渉は、2024年初頭に開始される予定である。

【参照ページ】
Sustainable finance: Council agrees negotiating mandate on ESG ratings

関連記事

“イベントへのリンク"

おすすめ記事

  1. 2024-4-9

    SBTN(Science-Based Targets for Nature)とは。企業のネイチャーポジティブ経営を実現する目標設定の方法論を解説。

    TNFDのフレームワークが公開され、先進企業ではフレームワークに基づく情報開示が進みつつある(20…
  2. 2024-4-2

    【さくっと読める】TNFDの開示とは。重要ポイントを抽出。

    2023年9月、TNFDのフレームワークが完成し公開された。2023年時点でTNFDに基づく開示を…
  3. 2024-3-26

    【さくっと読める】ESGスコアとは。基本的知識を解説。

    今月から、サスティナビリティ情報開示で関心の高いテーマについて、さくっと読める解説コラムを発行して…

ピックアップ記事

  1. アップルのサプライチェーンの95%、2030年までに100%再生可能エネルギー使用を約束

    2024-4-25

    アップルのサプライチェーンの95%、2030年までに100%再生可能エネルギー使用を約束

    4月17日、アップルは、バリューチェーンの脱炭素化という目標に向けて大きく前進していることを発表し…
  2. 2024-4-24

    ダウとP&G、プラスチック・リサイクル技術の共同開発契約を締結

    3月25日、 米国の化学世界大手であるダウと消費財業界大手のP&Gは、プラスチック・リサ…
  3. 2024-4-24

    住商グループとパートナー企業、太陽光発電パネルの再利用・リサイクル実証実験に着手

    3月28日、住友商事、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)、SMFLみらいパートナーズ…

アーカイブ

ページ上部へ戻る