未上場企業ガバナンスへ提言 日本取締役協会が3類型別に指針

12月5日一般社団法人日本取締役協会は、全国の未上場企業に向けたコーポレートガバナンス(企業統治)提言書を公表した。日本には約178万社の法人があるが、上場企業はわずか0.22%。地域経済を支える未上場企業で、経営の属人化やリスク管理の遅れが課題として顕在化していることを受け、三つの企業類型ごとに必要な統治モデルを示した。

提言書は、未上場企業を「スタートアップ企業」「昭和型企業」「非上場大企業」に分類。スタートアップ企業には、創業初期から取締役会の開催や権限規程の整備など“ミニマムガバナンス”を導入し、資金調達や採用に不可欠な透明性を確保するよう求めた。また、数字の裏付けを検証する「ファクトレビュー」や、業界で失敗事例を共有する文化づくりの必要性も強調した。

昭和型企業については、オーナー支配の強さや家族主義、管理会計の不足などの構造的課題に言及。名ばかりの取締役会から脱却し、社外アドバイザーや金融機関OBを加えた実質的な議論の場へ転換することを提案した。さらに、事業承継時の税制優遇にガバナンス要件を組み込むことで、承継を改革の契機にする仕組みづくりを求めている。

非上場大企業に対しては、創業家に権限が集中しやすい点をリスクと捉え、権限規程の整備や社外取締役の活用など、形式面と実質面の両面から「自律的な牽制」を働かせる体制をつくるべきだとした。企業理念や家訓にガバナンス方針を組み込むこと、トップによる社内対話を通じ文化として根付かせることも重要だとしている。

三類型に共通して示された視点は、「企業を公器と捉え、私物化を防ぐこと」「形式より実質を重視すること」「文化と制度を調和させること」。協会は、ガバナンスは成長を妨げるブレーキではなく「企業価値を高める加速装置」だと位置づけ、未上場企業の持続的発展には統治の強化が不可欠だと結んだ。

(原文)未上場企業におけるコーポレートガバナンス提言書

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