証券監督者のための国際的な政策フォーラムおよび基準設定機関であるIOSCOは、ESG格付けおよびデータの提供者の監督を強化するよう規制当局に求めている。IOSCOは、「環境・社会・ガバナンス(ESG)格付およびデータ製品プロバイダーに関する最終報告書」を発表し、急速に成長している市場の信頼性と透明性を高めることを目的として、規制当局とESG格付・プロバイダー自身の双方に幅広い提言を行っている。
投資家が投資プロセスにESGを考慮するようになったことで、ESGのデータやサービス、格付けに対する需要が急増しているが、プロバイダーの活動やビジネスは、一般的に市場や証券規制当局の対象外となっている。
今年初め、IOSCOは、ESGレーティングおよびデータプロバイダー市場の実態調査を開始した。この調査では、格付けやデータ商品が何を測定しようとしているのかという定義が明確でなく、整合性が取れていないことや、商品の基礎となる方法論に関する透明性が低いことなど、いくつかの問題が見つかった。さらに、プロバイダーが対象企業にコンサルティングサービスを提供している場合の潜在的な利益相反に関する懸念なども指摘された。
今回の報告書は、この実態調査に基づいてIOSCOが発表したコンサルテーション・ペーパーに続くもので、主要な問題に対処するための一連の提案を含み、改善すべき点を強調している。IOSCOによると、このペーパーに対して60件以上の回答が寄せられ、提言の内容に概ね同意するものだった。
提言は、規制当局がESG評価の提供者やデータプロバイダー、およびそれらの製品やサービスの利用に、より大きな関心を向けることを検討することを提案することから始まる。またプロバイダーに対し、潜在的な利益相反を特定して開示することや、プロバイダーが使用するデータや方法論を検討することを求めることが含まれている。IOSCOは、ほとんどの国・地域において、これらのプロバイダーに適用される規制の枠組みがないことを指摘しているが、欧州委員会の「持続可能な金融のための行動計画」や英国の「持続可能な投資へのロードマップ」など、規制による監視を適用するためのいくつかの地域での活動を紹介している。
また、本報告書にはプロバイダーに対する広範な提言が含まれており、その中には、利用可能なデータの徹底的な分析に基づく格付や商品に関する透明性の提供などが含まれている。また、プロバイダーに対しては、潜在的な利益相反を管理・緩和するために検討すべき事項や、ESG格付け・データプロバイダーとその対象企業とのコミュニケーションの指針となるような提言も含まれている。
【参照ページ】IOSCO calls for oversight of ESG Ratings and Data Product Providers