NY市年金基金、気候対応不十分としてブラックロックなど3社の運用見直しへ

11月26日、ニューヨーク市のBrad Lander会計監査官は、ニューヨーク市職員年金制度(NYCERS)、教職員退職年金制度(TRS)、教育委員会退職年金制度(BERS)の各年金基金に対し、ネットゼロ実装計画の最新アップデートを報告した。評価の結果、運用会社49社のうち、ブラックロック、フィデリティ、PanAgoraの3社が気候対応に関する基金の期待水準を満たさなかったとして、運用の見直しや契約終了を推奨した。

NY市の3基金は2023年にネットゼロ実装計画を採択し、2040年までのネットゼロ達成に向け、排出量の測定・開示や企業へのエンゲージメント、気候ソリューションへの投資、リスク低減のためのダイベストメントなどを進めてきた。これまでに資金提供由来排出量は2019年比で37%削減し、化石燃料関連資産の売却や119億ドル規模の気候ソリューション投資を実行している。

今回の評価では、49社すべてが脱炭素計画を提出したものの、ブラックロックはSECの報告要件変更を理由に、米国企業で5%以上を保有する場合の議決権行使に関する主体的なエンゲージメントを停止。これにより企業の脱炭素行動を促す取り組みが十分ではないと判断された。ランダー氏は、ブラックロックが運用する423億ドルの米国株式インデックスのリビッド(再入札)を求めている。

フィデリティはSEC指針を過度に広く解釈し、米国外企業にもエンゲージメントを控える姿勢を示したため、TRSが3.84億ドルを運用するWorld ex-US small-capの終了を推奨。PanAgoraは気候エンゲージメントを排出量開示に限定しているとして、NYCERSとTRSの米国小型株運用の契約終了を提案した。

さらにランダー氏は、電力会社向けの目標設定手法である“SMARTargets”が現時点ではグリーンウォッシングの懸念を払拭できないと指摘し、改善に向けた業界対話を継続する姿勢を示した。また、2025年6月に提案した「パイプラインやLNGターミナルなど中流・下流の化石燃料インフラへの新規投資の停止」方針を改めて支持し、年金基金の長期リスク軽減の観点から採択を求めた。

(原文)Comptroller Lander Recommends Pension Boards Drop BlackRock, Fidelity, and PanAgora Due to Inadequate Decarbonization Plans
(日本語参考訳)ランダー会計監査官、脱炭素化計画が不十分なため、年金委員会にブラックロック、フィデリティ、パナゴラの投資を除外するよう勧告

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